を読む。
リチャード ロイド パリー 『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』 早川書房、2018
英国のジャーナリストによって書かれた、東日本大震災についてのルポルタージュ。震災で起きたのはまさにこういうことだったのだと、私自身も被災者の端くれとして、戦慄しながら読んだ。
まず、大川小学校で74名の児童がなくなった事故とそれへの遺族や行政の対応。裁判と遺構保存が決まるまでの顛末。実名で登場する多くの人々への共感と違和感を冷静な筆致で描いている。
そして、大川小学校の事故とシンクロしながら語られるのは、多くの被災者に見られた心霊現象、すなわち幽霊が主題だ。「オカルト」ではない。幽霊を見、幽霊となって語ることは、依り代となった人が身に生じたトラウマを物語として吐露することに他ならない。それは嘘でもなんでもなく、震災という巨大な出来事が生み出した事実なのだから。
両者に伏流する、もう一つの主題は「日本」である。世界を驚かせた被災者の自制心は美徳であると同時に、これほどの事態を経てもなおなんら社会変革を起こすことのできない保守性の現れでもある。そして案の定、我々は以前の生活を取り戻している。悪い部分もそのままに。
原著は2017年8月に刊行された。6年をすぎて外国人によって書かれた本書は、東日本大震災について読むべき本の古典となることだろう。