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2017年01月 アーカイブ

2017年01月01日

謹賀新年

旧年中は大変お世話になりました。

今年もよろしくお願いいたします。

平成丁酉 元日

2017.1.1

本江正茂

2017年01月02日

北京清華大学にて西河村ワークショップ最終講評会

2016年12月26日から30日まで、北京を訪れていた。

清華大学、浙江大学、中原大学、東北大学の四校の合同で行った「西河村ワークショップ」の最終講評会のためである。本学からも履修者全員ではないが、5名の学生が参加した。

オンラインでの中間講評では、どのグループもやや観念的でまだまだ曖昧なものが多いように感じていたが、各校ともかなり具体的に仕上げてきており、非常に充実した内容になっていた。清華大学は実務経験を経て大学院に戻った学生が少なくないこともあって、多面的な検討を経た密度の高い仕上がりの作品が多くあった。浙江大学のチームは建築の詳細図も提出し、マテリアルも押さえた具体的な空間像が示されていた。中原大学も、トーンが整わないと言うこともできるが、たくさんの造形的なアイデアを盛り込んだ意欲的な作品を出してきた。

乱暴な一般化だが、東北大学の作品は、着眼点や切り口は悪くないが、コンセプト止まりなところがある。もっと具体的なシステムを提示することや、臆せずに手が動かして、空間の造形を進めることが必要だろう。

清華大学の建築学科は,キャンパスの中心近くに大きな建物を占有しており、ホールやギャラリー、工房などの充実した学習環境を持っていた。

日本の大学の建築学科、特に国立大学のそれは、世界の建築学科と比較すると、環境の充実という点ではっきりと見劣りする。それぞれの規模が小さすぎる点が問題かもしれない。 私の普段のミッションでは領域横断的な活動を重視しているから、基本的には小規模で多様なスクールが数多くあることのメリットを推したいのだけれど、こと建築デザインの教育という点だけで見れば、集約的な施設が必要な部分があり、地域ごとに、より大きなデザインスクールに統合していくような形もあるのかもしれない。

2017年01月03日

パトリク・オウジェドニーク『エウロペアナ: 二〇世紀史概説』

チェコの作家による、20世紀のヨーロッパ史概説。歴史教科書のような客観的な文体で書かれた、しかし実に手の込んだ事実のテキストのコラージュ。

様々な概念のカテゴリーもスケールも時間軸も、実に自在な足取りでひょいひょいと飛び渡り、ワンセンテンスで広い範囲と長い時間を飲み込みながら、おそらく嘘はないのだろうが、全体として嘘のようなホントの話として語り紡がれていく「歴史」。

皮肉たっぷりにふざけて見せているようではあるが、批判をしようとすると、そもそも歴史を叙述するということは、こういうことでしかありえないのではないかとの反論が返ってきそうだ。

欄外に散りばめられた小見出しも面白いし、脱臼しながら繰り返される単語の列挙の形の流れとリズムは実に詩的だ。チェコ語の原文と照らす力は私にはないが、翻訳は実に滑らかで美しい。「ごろつき」ってチェコ語では何なんだろう。

レイモン・クノーとか、形式が卓越している文章が好きな人にはたまらない。

形式が卓越する一方で、題材として選択されているエピソードは、世界大戦、宗教、バービー人形、共産主義、インターネット、現代科学と情報理論、ファシズム、フェミニズム、ブラジャー、ロマ、2000年問題などスケールこそ様々ながらそれぞれに深刻で切実なものばかりで、此処に個々に相互に孤立しながら羅列された離散的様相こそ実に20世紀ヨーロッパなのにちがいない。この様相は21世紀もなお続いているように思われる。

2017年01月04日

天壇

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天壇は北京南部にある、明・清代の皇帝による儀礼の空間である。今は儀礼は行われておらず、遺跡として観光地になっている。明代1420年の建造とある。

とりわけ円形で三重の「祈年殿」は紫禁城と並び北京を代表するランドマーク建築だ。 杉の古木の人工林から、塀によって矩形に囲み取られた内部に、円形三重の基壇があり、祈年殿はその上に建っている。

塀のうちには樹木はまったくない。

日本の祭礼空間は神社の境内のように全体が高い木立に包まれているような感じがあるが、天壇はまったく違う。

手前、南側の皇穹宇あたりは周囲の木々が普通に見えている。 UNADJUSTEDNONRAW thumb 391c4

祈年殿の区画に入って、基壇を登ると UNADJUSTEDNONRAW thumb 391ca

周囲の木々の梢は基壇の高さで切りそろえられている。杉系の木だと思われるのだが、幹が異様に太いのに対して、背はとても低い。 そのため、基壇に上がると突然視界が開け、木々の梢の雲海の上に浮き出たような独特の浮遊感がある。

北京市中心部は現代でも高層建築は制限されており、その浮遊感はよく保たれている。

西側 UNADJUSTEDNONRAW thumb 391cd

東側 UNADJUSTEDNONRAW thumb 391cc

見上げると、こんな風。飛びそうだ。 UNADJUSTEDNONRAW thumb 391ce

周囲のジャングルの樹々の梢の高さに合わせて、マヤのピラミッドの高さが決まっており、そこに登ると突然視界が一気に開けるという話を聞いたことがあるが、天壇もまさにそのようなランドスケープデザインがなされているのだろう。

ただ、マヤでは既にあるジャングルの木々の高さを目指してピラミッドを構築するのに対し、天壇では木を剪定して高くならないようにしている。仮想される天上面の設定の仕方がまったく異なるのだ。


さて、祭礼の空間を抜けると、祈年殿の区画から東側に長い回廊が伸びている。供物を運ぶ際に雨にあてないための回廊であるという。

訪れたのは平日の午後であったが、この回廊に地元の人々が大勢集まっている。スパンごとにグループになって、回廊の欄干を縁台のようにして、カードゲームや中国将棋などに興じているのだ。脇から覗く限りでは、賭けをしているようには見えなかった。どのスパンも、とにかくワイワイと騒がしく、実に楽しそうにしている。

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この聖俗の隣り合う感じはとても面白く、私にとって今回の北京滞在のハイライトであった。

2017年01月09日

コダナリエ

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宮城県山元町で開催されている「コダナリエ」をおとづれた。
寒い中を出かけていくだけの楽しみのある、実に素敵な手作りのイルミネーションイベントである。


「滝」や、朧すぎる「蛍」、LOVEの文字、竹林、馬のない馬車など、趣向を凝らしたイルミネーションが多く設置されている。会場の方が自虐的に語るように、しげしげ見ればアラはあるのだけれども、暗闇の中に光が散りばめられているのを見るとワクワクするという、星空を見るときのような嬉しさがある。

仕込みには2ヶ月かかっているという。きっと大変だけど楽しい仕込みだったことだろう。来年は仕込みに来たい。

[http://kumaproject.jp/kodanarie/](http://kumaproject.jp/kodanarie/)

 

2017年1月21日(土)まで、毎日17:00~21:00。
会場は宮城県亘理郡山元町の小平農村公園
(山元町小平字舘18-1番地)
入場無料、駐車場あり(無料)

2017年01月10日

Alternative Office Book発刊

『Alternative Office Book #1, #2』の実費での頒布をはじめます!

2017年1月10日

郵便での申込み受付、ゆうメールまたはレターパックライトによる送付となります。



  • 返信用封筒(角型2号以上/300円分切手貼付/送り先住所・氏名記載)、またはレターパックライトの封筒を同封ください。
  • 発送用封筒(表面に「Alternative Office Book希望」と赤字で記載)を下記住所までお送りください。

    〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-06

    東北大学大学院 工学研究科 都市・建築学専攻

    本江正茂研究室

    Alternative Office Book 担当係

  • 部数に限りがあるため、先着順でお一人様一部ずつの配布とさせていただきます。
  • 配布数に達し次第、受付を終了いたします。
  • 発送は随時行いますが、申込み状況により到着まで少しお時間をいただく場合がありますことご了承ください。

どうぞ手に取ってご覧くださいますように。

2016年9月17日

表紙3

このたび、東北大学本江研究室は(株)岡村製作所オフィス研究所と共同で、はたらく中での「行為」からワークプレイスを捉える“Alternative Office Book”を発刊いたしました。

本書は建築、空間、家具からオフィスを捉えるのではなく、また、学術的な論文投稿や学会発表などのアカデミックなチャンネルだけで社会に情報公開するのではない形式からオフィスについて語ろうと、“Alternative”の名を冠しています。

今回取り上げたのは「Session」と「Switch」の2つの行為です。

本のつくり

まず“#1 Session”は、音楽のセッションのように意見が活発に交わされ、思いもよらなかったゴールに至るような「会議」をするためにはどうすればいいのかという疑問からスタートしています。世の中には抱えている問題に周囲の多様な人たちの関心を集め、議論を起こそうといろいろな工夫をしながら活動している人がたくさんいます。そうした現場にうかがい、お話を聴かせていただくことから始めました。

Session 本文2

また、「プレゼンテーション後の議論を活性化するにはどうすればいいのか」といった、わたしたち研究室での実験についてもやわらかくかみ砕いて盛り込んでいます。


Switch 分解

2冊目の“#2 Switch”は、「いつでも」「どこでも」「だれとでも」はたらけるようになったと言われる現代において、多くの人はそれぞれを自分のスケジュールや気分、仕事の内容などにあわせて、それらを切り替えながらはたらいています。ただし、切り替えのタイミングや前後の変化にはたくさんのバリエーションがあり、自分の周囲の人がどんなに巧みに切り替えながらはたらいているのかということを意識することは少ないのではないでしょうか。

本書には「フリーアドレス」「テレワーク」といった以前からある切り替えとともに、昨今増えてきている「多拠点就業」や「移住」についてもスポットをあて、取材を行いました。


Switch 本文1

また、仮想的に視環境を切り替えられる装置をつくって、利用状況や作業への影響を検証した研究室の実験についても盛り込んでいます。

背表紙

学生と社会人が、少人数で取材からライティング、構成、デザインまで手作りですすめたため、多少稚拙な部分もあるかと思いますが、その分、他では味わえない本江研究室ならではの視点や濃い部分も味わっていただけるのではないかとひそかに期待しています。


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私家版で非売品ですが、ご希望の方には実費で頒布できるように準備を進めております。

頒布方法については近日このページで公開いたしますので、ぜひ、お手に取っていただければ幸いです。

Alternative Office Book 1

SESSION

1. 議論を起こす、種を蒔く

2. EXHIBITION ー綿密なつくり込みで意見を引き出すー
日本科学未来館 冨田さん・戸坂さんインタビュー

3. MEETING ー意見を集めて検討するー
議論が活性化するレイアウトを探る

COLUMN 1 盛り下がるプレゼンテーション

4. DISCUSSION ー代表的な意見を提示し、議論するー
江渡浩一郎さんインタビュー

COLUMN 2 ペチャクチャナイト

5. EDUCATION ー興味を持ち、自分の頭で考え、伝えるための教育ー
レッジョエミリアを訪ねて

COLUMN 3 アクティブラーニングとはなにか

6. WORKSHOP ーみんなが主体的に動ける組織をつくるー
コミュニティデザイナー 菊池宏子さんインタビュー

7. SESSION は舞台をつくる、未来をつくる

BOOK REVIEW

編集後記

Alternative Office Book 2

SWITCH

1. 切り替えから仕事を読み解く

2. オフィス内ではたらく空間を切り替える

フリーアドレスオフィスの登場と進化

COLUMN 1 自分たちで変化させる

3. 仕事のための場所と時間の自由度を上げる

テレワークと労働時間貯蓄制度

COLUMN 2 あたらしいスイッチ

4. コードの Switch

これまでのコード、これからのコード

COLUMN 3 気分転換の代名詞、コーヒーの作用

5. 仏生山ではたらくこと 東京ではたらくこと

ブックピックオーケストラ 川上洋平さんインタビュー

COLUMN 4 自分事化してきた多拠点居住就業モデル

6. 生活の場を移してはたらく

移住の先進事例、神山町の新たなフェーズ

7. 景色を切り替えられる状態で人はどのようにはたらくのか

仮想的に視環境を切り替える装置の検証

COLUMN 5 個別環境をつくりやすい時代へ

8. すべての仕事はつながっている

デザインマトカ代表 遠藤和紀さんインタビュー

9. 切り替えることは切り拓くこと

「Switch」の可能性

BOOK REVIEW

編集後記


2017年01月26日

『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある』

自殺が極めて少ない地域である徳島県旧海部町。その人々の振る舞いの中に生きづらさを取り除く「賢さ」を見出す丁寧な社会調査。

研究成果として抽出された自殺予防因子もさることながら、研究者としてコミュニティに入ってフィールドワークを行うことの面白さと恐れを読み取れる好著。

地形と自殺の関係を分析する章も興味深い。可住地傾斜度と最大積雪量は自殺率と正の相関があり、可住地人口密度、日照時間、海岸部属性は負の相関があるという。社会資源へのアクセスが難しいという直接的な影響もあるが、むしろ、長い歴史の中で地勢が育んだ住民の気質が間接的に聞いて来る。

また、町のあちこちにアドホックな交流空間がたくさんあることの影響についても言及されている。この知見はオフィスや学校の建築設計にも使えるのではないだろうか。

なにより海部の人たちの飄々とした様子がなんともかっこいいのである。

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