2014年のウクライナ政変と重ねて、チェルノブイリ原発災害の原因を探るアーティストを追ったドキュメント映画。
Amazonプライムで見られる。
R15指定なのは陰謀説だからではなくて、 途中、アーティストによるパフォーマンスのシーンで裸がちょっと出てくるからだろう。
少年時代にチェルノブイリ原発「事故」で被爆したアーティスト、フョードルは、その事故の原因を探っていた。
原発のすぐ近くに、巨大なレーダー施設の廃墟 DUGA-3 がある。
DUGA-3は、冷戦時代、アメリカのミサイル基地の動向を探るための装置として巨費を投じて建造された。長くその役割は極秘とされていた。10Hzの単調な無線信号をコツコツと出し続けていたことで「ロシアのキツツキ」と呼ばれていた。
以下、ネタバレを含む。
通常は、このレーダー兵器が廃墟になっているのは原発事故のためだと考えてしまうが、実は逆で、前者が後者の原因なのではないかと、フョードルは考えた。
撮影クルーとともに関係者にインタビューを重ね、実は、DUGA-3には原理的な設計ミスがあり、まったく機能していなかったことを突き止める。
大規模な税金の無駄であり、そのことが明らかになれば責任者は死刑である。ソ連はそういう社会であった。
1986年9月にDUGAへの査察が予定されていた。この査察で事業の失敗が露見することを恐れた権力者が、すぐ近くにある原発で「事故」を起こすように強要し、直前の1986年4月26日、チェルノブイリ原発は爆発した、というのがフョードルらが到達した事故の「真相」だった。
彼が提示するこの仮説を立証するには、すでに証拠資料は失われており、多分に陰謀説くさいところがある。
だが、モスクワからのコンタクトがあり,ソ連時代を知る周囲の人々にこれ以上の追及は止めておけと言われ、この説を真実であると確信したアーティストは、逆に、権力による弾圧で自身や家族に危害が及ぶことを真剣に恐れるようになってしまう。ソ連の亡霊は生きている。
そこに、ウクライナの政変が生じ、市民と権力の衝突が眼前で繰り広げられることになる。
ソ連共産党独裁時代の抑圧の記憶は人々に深く刻まれていて、その記憶がウクライナ政変と直結しており、広場に集まる市民を弾圧する政府側の態度の先に、第三次世界大戦への準備を見出さずにいられないという不穏な感じは、登場する人々の表情や声色によく表れている。
彼の説が真実かどうかはわからない。しかし、自由ではない国家が、直接的に、間接的に、人々に強いる忍従の重みは、想像に難くない。
キエフの広場に集まった人々への炊き出しの映像に重ねて、権力への抵抗を鼓舞する勇ましい歌が流れる。フランスのそれを代表に、多くの国の国歌が血なまぐさい暴力的な心情を歌うものであるのは、革命を鼓舞する歌だったからだ。
国民が自由である国家は、自明な存在ではないのだ。
DUGA-3 は今も残っており、廃墟マニアの間では有名なようである。
https://goo.gl/maps/wYJq73C5t5z
こんな曲もあった。意外にいい感じだ。
Duga-3