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2013年05月08日

建築ITコミュニケーションデザイン論、2013-05-08

4 身体と空間(1) 視覚

建築ITコミュニケーションデザイン論 第4回

本江正茂

2013年5月8日(水)

ダイアログ・イン・ザ・ダーク

「Dialog in the Dark」は、日常生活のさまざまな環境を織り込んだまっくらな空間を、 聴覚や触覚など視覚以外の感覚を使って体験する、ワークショップ形式の展覧会です。 1989年ドイツ・ハイネッケ博士のアイディアで生まれ、その後、ヨーロッパ中心に70都市で開催、 すでに100万人が体験しています。 参加者は、くらやみの展示室を普段どおりに行動することは、不可能です。 そこで、目の不自由な方に案内してもらいます。案内の人の声に導かれながら、 視覚以外の感覚に集中していくと、次第にそれらの感覚が豊かになり、 それまで気がつかなかった世界と出会いはじめます。森を感じ、小川のせせらぎに耳を傾け、 バーでドリンクを深く味わいながら、お互いの感想を交換することで、これまでとはすこしちがう、 新しい関係が生まれるきっかけをつくります。(DID in 仙台 開催趣旨文より)

DID、3つのテーマ

  1. 視覚障害者と健常者が一緒に活動する機会を設けること
  2. 視覚を遮断することによって五感を再認識する(活性化させる)こと
  3. この展示ツアーを何人かと一緒に体験することにより、参加者同士の間に、これまでにない「対話」を生み出すこと

Dialog in the Dark in 仙台

2001年10月21~31日於せんだいメディアテーク

実質参加者数:592名。本江も参加。

  1. 集合。白杖の持ち方。自己紹介。声を覚える。
  2. 森:木の匂い、落ち葉を踏む、幹や枝の手触り、小川を渡る。
  3. 街:信号の音、段差、クラクション、クルマ
  4. 海:陸橋をこえる。砂浜、ブランコ、古いボート、宝探し
  5. テーブル:様々な感触のオブジェ、音が出るおもちゃ
  6. バー:席に着く、飲み物を渡す、ワインを飲む、胃袋の形
  7. 絵を描きながら対話。よそよそしく別れる。

動くと環境のことがわかる。じっとしていると何もわからない。

障害者体験以上に、感覚の解放の問題。マルチメディア?

東京・外苑前で現在開催中。ぜひ行くべき。

ドッベル・アイ Dobelle Eye

  • ウィリアム・ドッベルによる人工視覚の研究成果。1999年公開。
  • 1968年に研究開始。1970-72年、ヒトの脳内に電極を設置。
  • 開発当時は800kgのコンピュータが必要だった。今はモバイルパソコンで可能。
  • CCDカメラ→デジタル化→コンピュータ→大脳皮質視覚野にパルス
  • 色は分からない。先天性視覚障害で視覚野が未発達の場合は使えない。

  • 事例にあるジェリー氏は22歳の時に外傷で片目を失明。36歳のとき第二の外傷で全盲となる。1978年(41歳)に手術をうけ、20年以上感染などの問題なく暮らしている。地下鉄にも乗れる。

  • イェンズ氏は17歳の時線路際での事故で左目を失明、3年後スノーモービルの修理中に金属片が右目に入り失明。
  • 2002年4月現在、システムは市販され、6か国で8名の患者がインプラント手術をうけている。将来的には手術料込みでUSD $50,000。

  • 「体を動かして帽子を取り、人形にかぶせる。」→ 視覚と身体動作の同調=見えている!

  • ソースはカメラでなくてもいい。

  • デジタルな視覚 vs オプティカルな視覚
  • ゲシュタルト=感覚要素の総和以上のもの、総和とは異なるもの
    • e.g. 個々の音に対するメロディ
  • 中枢−推論説(感覚器官→知覚) vs ファイ現象(仮現運動:点滅する電球が移動してみえる)
  • 要素刺激とゲシュタルトは同レベルにある。

  • 視覚その他の人工眼研究

    • カメラからの信号の受信部の取り付け場所で3タイプ
    • 網膜/視神経/大脳視覚野
    • 脳に近いほど適用可能性は広い、実装が困難。
  • イエンス・ナウマンさんの事例

    • NHKスペシャル「立花隆 ヒトはどこへ行くのか」2005年11月5日放送。
    • 8m50sごろから14m33sまで

眼球へのインプラント手術、英オックスフォード大学(2012)

  • 「目のサイボーグ化による失明治療が世界で初めて成功!!盲目の男性がマイクロチップを眼球に埋め込むことで10年ぶりに見ることができるように!!」http://commonpost.boo.jp/?p=34619
  • “'I've dreamed in colour for the first time in 20 years': Blind British man can see again after first successful implant of 'bionic' eye microchips”
  • http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2138775/The-eye-borg-First-successful-implant-bionic-eye-restore-sight-blind.html

James J. Gibson ジェイムズ・J・ギブソン(1904-1979)

  • 航空母艦に着艦する戦闘機パイロットの視覚の研究。
  • 驚異的な「あたりまえの視覚」 vs 視覚心理学実験室での貧しい視覚
    • 大地理論 vs 大気理論
  • 視覚フィールド視覚ワールド Visual Field, Visual World。
    • 境界、明瞭性の勾配、安定性、残像の位置、姿勢と重力、平行線の収束、食、奥行き
    • 「視感覚と視知覚という伝統的な区別」の含意を放棄
    • 「知覚と対象の間のズレ」が「ほとんどない」のはなぜか
  • 地面の発見。肌理(テクスチャー)の勾配、密度の勾配による奥行きの知覚。
  • 環境の中を動き回る知覚者の知覚。

  • 生態光学(エコロジカル・オプティクス)

    • 情報は光の中にある。ただし、放射光ではなく包囲光に。
  • 包囲光配列(ambient array)
    • vs プラトン:視線とは「目から一直線状に、どの方向にせよ、内から出て行くものが外界で出くわすものと衝突してこれに抵抗を与える」(加藤, p.56)
  • 明るさと形、大きさの恒常性。杭の実験
  • 視覚ワールドを一度に知覚することはできない。時間を抜きにして空間を理解することはできない。
  • 最後の3章:意味、学習、空間知覚と空間行動 → 環境と身体のインタラクション全体へ
  • 「形」にではなく「変形」に意味がある。
    • 変化しないことではなく、変化することで、対象の不変の性質——不変項(インバリアント)——が明らかになる。

Biological Motion バイオロジカルモーション

Motion Understanding

  • 視覚は単純な静止した像ではなく、動きに意味を見いだす。
  • 視覚のピラミッドの錯覚を破るには? 動いてみればいい。

佐藤雅彦

  • APOC
  • 「差分」

矢萩喜従郎

  • アトラクティブ・ビジョン(バイオロジカルモーションとは違うが)

メルロ=ポンティ『眼と精神』

「画家はその身体を世界に貸すことによって、世界を絵に変える。」

「わたしの位置の移動はすべて、原則としてわたしの視野の一角に何らかの形で現れ、〈見えるもの〉の地図に描きこまれる。そして、わたしの見るすべてのものは、原則として私の射程内に、少なくともまなざしの射程内にあって、「私がなしうる」ことの地図の上に定位されるのだ。この二つの地図はいずれも完全なものである。つまり、見える世界と私の運動的企投の世界とは、それぞれに同一の存在の全体を覆っているのだ。」

「謎は、私の身体が見るものであると同時に見えるものだという点にある。……この最初のパラドクスは、爾余のパラドクスを生み出さずにはいない。見えるものであり、動かされるものである私の身体は、物の一つに数え入れられ、一つの物である。私の身体は世界の織目の中に取り込まれており、その凝集力は物のそれなのだ。しかし、私の身体は自分で見たり動いたりもするのだから、自分の回りに物を集めるのだが、それらの物はいわば身体そのものの付属品か延長であって、その肉のうちに象嵌され、言葉のすべき意味での身体の一部をなしている。したがって、世界は、ほかならぬ身体という生地で仕立てられていることになるのだ。」

参考文献

  • ダイアログ・イン・ザ・ダークhttp://www.dialoginthedark.com/
  • Dobelle Institute http://www.artificialvision.com/index.html
  • Dobelle Eyeについての論文の和訳 \
  • ジェームズ・J.ギブソン『視覚ワールドの知覚』新曜社、2011
  • 佐々木正人『アフォーダンス――新しい認知の理論』岩波書店、岩波科学ライブラリー12、1994
  • Motion Understandinghttp://www.accad.ohio-state.edu/~asomasun/MotionUnderstanding/Motion.html
  • 港千尋『第三の眼:デジタル時代の想像力』廣済堂、廣済堂ライブラリー002、2001
  • モーリス・メルロ=ポンティ『眼と精神』滝浦静雄・木田元訳、みすず書房、1966
  • 加藤道夫「遠近図法の作図理論の発展・応用・克服」ヘルマン・ゴチェフスキ編『知の遠近法』講談社、2007
  • 矢萩喜従郎『アトラクティブ・ビジョン』アー・ドゥー・エス パブリシング、2009
  • 佐藤雅彦、菅俊一、石川将也『差分』美術出版社、2008 

2013年05月10日

基礎設計B 課題(2) 3Dモデリング

2年生(3セメ)基礎設計B 課題(2) 3Dモデリングのホームページは下記にあります。

基礎設計B 2013 課題(2) 3Dモデリング

  • 5月13日(月) はじめてのSketchUp
  • 5月20日(月) モデリング作業(1)
  • 5月27日(月) モデリング作業(2)
  • 6月3日(月) FlowDesignerを用いたCFD入門(1)
  • 6月10日(月) FlowDesignerを用いたCFD入門(2)

2013年05月23日

建築ITコミュニケーションデザイン論、2013-05-15

5 身体と空間(2)

意味や価値は世界のどこにあるのか? 建築ITコミュニケーションデザイン論 第5回:

本江正茂

2013-05-15(水)

サイボーグと身体

テレビ番組「NHKスペシャル 立花隆 ヒトはどこへ行くのか」(NHK, 2005)を見つつ。

  • 脳は機械に合わせて進化する 人工耳
  • 脳が機械で調整される パーキンソン病

どう考えますか? 精神/物質、脳/身体、生命/環境、Human Enhansment

意味や価値は世界のどこにあるのか?

近代科学的唯物論=世界は物質の配列にすぎない。

→物質それ自体には感性も価値も目的もない。つまり意味がない。

→意味や価値は「精神の世界」に生じる。物質の世界と精神の世界の分裂。存在論から認識論へ。

アリストテレス(自然の意味は知覚される) vs

  • ガリレオ(知覚的に把握されるのではなく,知性によってのみ理解される性質)
  • デカルト(「精神的洞察」知性によって捉えられる「幾何学的延長」)

問題:色彩はどこにあるか?

→二極化

  1. 知覚主観の感覚。目に入る光刺激を処理する神経の性質
  2. 物体表面の微細構造が有する反射率性質にミクロ還元

精神→脳と神経

「物理主義的な存在者の限られた性質から、「有意味」な環境を「構成」して認識する知性のからくりを、主体に、あるいは脳に帰属せざるを得なくなってしまった」(染谷、p.89)

「ヒトや生き物を取り囲んでいる意味や価値を、何かに還元することなく、取り囲みの中にあるがままに取り扱うことのできる自然科学、そしてそれを支える哲学――特に存在論――が未だに出現していない」し、「生活資源としての意味や価値を従来の物理学や化学がまだ踏み込んでいない高次の事実として正当に扱うことのできる環境の科学が構築できないでいる」(染谷、p.87)

「取り囲まれる生物の知覚と行動につり合った生態学的水準での」環境存在論はいかに可能か?

環境世界論 ユクスキュル

機械的環境論 環境=「われわれを取り囲み、一定の刺激によって作用する客体的な体系」=環境は単一の均質な時空間。=環境は客体的な容器=私は環境の主体ではない。環境改善=容器の修繕という思考

ヤーコプ・フォン・ユクスキュル(1864-1944) エストニアの生物学者

生物はそれぞれの「意味の担い手」たる「知覚標識」からなる「環境世界」を生きている。

  • ダニ(酪酸!→落下→衝突!→這い回る→体温!→血を吸う)
  • ゾウリムシ(衝撃!→退避、腐敗バクテリア!→食べる)
  • ウニ(暗い!→トゲをのばす)
  • コクマルガラス(止まっているバッタは見えない)
  • イタヤガイ(天敵ヒトデの動きのリズムだけに反応して逃げる)
  • ミツバチ(☆+に反応、○□は無視=花と蕾。)

アフォーダンス J.J.ギブソン

affordance 環境が動物に提供する「価値」。J. ギブソンの造語。

  • afford ~できる、~を与える。
  • 事物の物理的性質ではなく、動物にとっての環境の性質。
  • 知覚者の主観が構成するのでもなく、環境に実在する、知覚者にとって価値ある情報。
  • e.g. 紙のアフォーダンス:破れる、包める、丸めて投げられる、はじいて音を鳴らす……
  • アフォーダンス by 佐藤雅彦 「いかにも……」
  • 「取り囲まれた動物の特定の行動可能性を促進または抑制する行動資源」(染谷,p.94)

ギブソンの表面幾何学

Surface Geometry:サブスタンス、媒質、表面。表面レイアウト

「知覚者でありかつ行為者であるテナントは、表面レイアウトとしてのリテイニアーと、表面レイアウトがテナントに提供する行為の可能性としてのアフォーダンスを特定する情報場(媒質)とに取り囲まれている」(染谷, p.95)

アフォーダンスへの誤解

  • 反射や反応を引き起こす「刺激」ではない。探索し、発見・獲得される「情報」である。
  • 知覚者が内的にもつ「印象」や「知識」などの主観ではない。
  • e.g. 食べられるか否かは食欲と関係ない。
  • 関係のとりかたによって、その都度出現したり消えたりするのではない。

ドナルド・ノーマン『誰のためのデザイン』のアフォーダンス

  • デザイン業界に「アフォーダンス」の概念を紹介
  • ギブソニアンから批判→「知覚されたアフォーダンス Perceived Affordance」に訂正された(1999)
    • ギブソン「座れる/座れない」という物理的事実
    • ノーマン「座れそう/座れなさそう」という情報
  • → "Signifier, not affordances"

知覚システム


  • ミクロな受容器ではなく、マクロに組織された身体によって知覚はなされる。
  • 「等価」で「冗長」な情報を複数のシステムで知覚している。e.g. 「火」「食べ物」

  • 基礎定位システム

  • 聴覚システム
  • 触覚システム
  • 味覚–嗅覚システム
  • 視覚システム

持続と変化

動くことによって、動かない構造を見いだす。

  • 変化の中の不変項 invaliant
  • 知覚の恒常性 consistency
  • 「設定不良の逆問題」答えから問題を作り出す。7=x+y
  • 次元が足らない情報を増やすために動く。3D の世界を2D の網膜でとらえる。
  • 固視微動。じっとしてても目は動いてる。動きを止めるとホワイトアウトして像を結ばない。
  • 世界の肌理、縁の発生:渡辺啓太 TextureWorld

情報ピックアップ

古典的な感覚作用にもとづく知覚モデル:刺激→「受容器」で「反応」→脳による処理→「情報」の生成。

↓さまざまな難問。感覚の限界という牢獄、恒常性、生得的能力、経験の体制化

 情報ピックアップ=情報にもとづく知覚:「情報」はすでに環境にある→「知覚システム」で「探索」して、直接手に入れる。

環境形而上学 バリー・スミス

「有機体がその中で生活しその中を異動する空間領域や空間領域の部分、つまり有機体を取り囲む環境についての一般的理論」「取り囲みの中でのヒトを含めた生物の知覚や行動の研究、取り囲みを実際にデザインし制作する研究が依拠している種種の「取り囲み構造」を統一的に理解するための理論、ないし概念枠組みの構築」(染谷, p.89)

二重穴構造 Double Hole Structure

  • リテイニアー(囲みを維持するもの、取り囲む構造物の境界:ほら穴の表面群)
  • 媒質(取り囲む穴を満たしている:空気)
  • テナント(内部の穴を占拠している占有者:熊)

曖昧な Fiat 境界

  • 境界は4つの類型:全閉鎖、半閉鎖、半曖昧、全曖昧
  • 取り囲みそのものを空間記述の基本単位とする⇔ 点、線、面による数学的記述

「建築とは、壁や床や天井という通り抜けできない表面群と通り抜けできる媒質からなる取り囲みを、その中での知覚と移動を一定に制限するような機能を持つように作り出す作業」(染谷,p.91)

「本稿が擁護する(引用者註:アリストテレスの)存在論へのアプローチ方法は、原子ではなく、通常の日常的活動においてわたしたちを取り巻いているメゾスコピック(=中間的)な事物から出発する。それは世界を、具体的かつ個別的な原子からなる存在として捉えるわけではなく、抽象的な(ひとつあるいは任意の段階から成る)「性質」や「属性」として見るわけでもない。むしろ世界はあなたと私によって、あなたの頭痛と私のくしゃみによって、あるいはあなたの闘争と私の戦いによってできあがっているのである。」(スミス, p198)

環境と自己

環境を知覚することと、自己を知覚することは、相補的。

エコ・メトリクス(生態学的測定法)

  • 登れる?=股下×0.88
  • すり抜けられる?=肩幅×1.3
  • くぐるかまたぐか?=股下×1.07
  • そのペンに手が届くか?=身体の寸法+柔軟性

建築はなぜ四角いのか? →人間が「直方体」であるから。(ボルノウ)

子供には三角より四角が描きやすい ?

ヒューマンスケール

  • 距離や空間の尺度に人体寸法を使う。 e.g. 尺(303mm)、間、坪、yard (914mm)、foot (304.8mm)
  • どこまで見えるか。表情16m、一体感80~90m
  • どこまで聞こえるか。よくわかる6m、急に手掛かりがなくなる30m
  • どのくらい嗅げるか。洗い髪,皮膚45cm、異性の体臭90cm
  • どのくらい触れ分けられるか。指は数mm、背中は50mm

なわばり感覚

  • なわばりの意義:えさ場、巣、雌の独占
  • 動物: 個体間距離、逃走距離、臨界距離、社会的距離

Personal Space

E.ホール『かくれた次元』/プロクシミクス(proxemics)

  • 接触~45cm 至近距離
  • 45 ~ 80cm 個人距離
  • 80cm~1.2m
  • 1.2m~2.1m 社会的距離
  • 2.1m~3.7m
  • 3.7m~7.6m 公衆距離
  • 7.6m以上

  • 性差 男性は正面を嫌い、女性は横を嫌う

  • 年齢差 40歳MAX説
  • 体の前と後ろ
  • 知人かどうか 電話ボックスに入りきらなくなる
  • 文化の差 日本人は大きい、アラブ、ラテンアメリカは小さい

参考文献

  • ヤーコプ・フォン・ユクスキュル『生物から見た世界』日高敏隆・野田保之訳、岩波文庫、2005
  • 佐々木正人『アフォーダンス――新しい認知の理論』岩波書店、岩波科学ライブラリー12、1994
  • 加藤孝義『空間のエコロジー:空間の認知とイメージ』新曜社、1986
  • エドワード・ホール『かくれた次元』日高敏隆・佐藤信行訳、みすず書房、1966
  • 佐藤雅彦『プチ哲学』マガジンハウス, 2000
  • J.J.ギブソン『生態学的視覚論』古崎敬ほか訳、サイエンス社、1985
  • オットー・フリードリッヒ・ボルノウ『人間と空間』大塚恵一,池川健司,中村浩平訳,せりか書房,1978
  • 境敦史,曾我重司,小松英海『ギブソン心理学の核心 』勁草書房,2002
  • 染谷昌義「「認識」の哲学から「環境」の哲学へ」佐々木正人編『包まれるヒト:〈環境〉の存在論』岩波書店,2007
  • D.A.ノーマン『誰のためのデザイン?——認知科学者のデザイン原論』野島久男訳,新曜社,1990
  • Smith, B. & Varzi, A.C., 2002, Environmental Metaphisics, http://ontology.buffalo.edu/smith/articles/Niche2.pdf
  • バリー・スミス「事物とその環境 アリストテレスから生態的存在論へ」『SITE ZERO』No.2, 2008, p.198
  • 渡辺啓太 TextureWorld http://www.persistent.org/medialab/WORKS021.html
  • fladdict.net アフォーダンスってなんザンス? http://www.fladdict.net/blog-jp/archives/2005/06/post_86.php
  • Don Norman "Signifier, not affordances" http://www.jnd.org/dn.mss/signifiers_not_affordances.html
  • 上田正文,渡部麻衣子 編『エンハンスメント論争—身体・精神の増強と先端科学技術』社会評論社、2008
  • Jane Fulton Suri + IDEO "thoughtless acts?", Chronicle Books, San Francisco, 2005

建築ITコミュニケーションデザイン論、2013-05-22

6 速度とスケール

Powers of Ten,時間の文化史、鉄道旅行の歴史 建築ITコミュニケーションデザイン論 第6回

本江正茂 

2013年5月22日水曜日

チャールズ&レイ・イームズ "Powers of Ten" 1977

  • スケールの移動。宇宙のなかで、例外的に豊かな我々のスケール

西村佳哲ほか『一日/A DAY』

  • 「最も強い生物時計のひとつ「日周期」をテーマとする」
  • 「太陽と潮汐、気象、バクテリア、植物、昆虫、動物たち、ヒトの身体、 人間社会を横断する11の映像」
  • 「一日を96秒で表現する、11のコマ落とし映像を横並びに同期投影。」
  • http://www.livingworld.net/10_aday/index.html

20世紀:速度への熱狂

  • スティーブン・カーン『時間の文化史』浅野敏夫訳、法政大学出版会、1993
  • 大西洋横断競争
  • 懐中時計:「短い時間」への関心。時間厳守の感覚。
  • 自転車、自動車、最初の公道における速度制限
  • 電車・電気・電信・電話
  • 工場労働、フレデリック・テイラー「科学的管理」1911, Fordism, 「モダンタイムス」
  • Ford vs GM
  • マイブリッジの連続写真,デュシャン「階段を下りる裸体 No.2」1912
  • ストラビンスキー「春の祭典:聖なる踊り」1913
  • もっと速く/もっとゆっくり

鉄道旅行の歴史

  • ヴォルフガング・シヴェルブシュ『鉄道旅行の歴史:19世紀における空間と時間の工業化』加藤二郎訳、法政大学出版局、1982
  • テクノロジーの導入による空間認識の変容という主題
  • 原動力の機械化,機械による新しい運動,カッサンドル,唱歌「汽車」
  • 鉄道の空間、鉄道の時間
    • 19C初期、時間の短縮=空間の収縮とだけ表現
    • 実は、空間の収縮と、空間の拡大の二重の現象。スプロールは鉄道にはじまる。
  • 時間と空間の抹殺,アウラの喪失,ヴェンヤミン
  • 標準時
    • 地方は独自の時間を失う。
    • 「標準時」は鉄道運行のために採用されたシステム。

時間、空間、地球の標準化。

  • 子午線:緯度経度、メートル法

Q 現代における速度とスケールの変容はどこに起きているか。それは今後どのように評価されることになるだろうか?

参考文献

  • スティーブン・カーン『時間の文化史』浅野敏夫訳、法政大学出版会、1993
  • ヴォルフガング・シヴェルブシュ『鉄道旅行の歴史:19世紀における空間と時間の工業化』加藤二郎訳、法政大学出版局、1982
  • フレデリック・W. テイラー『新訳 科学的管理法』有賀裕子訳、ダイヤモンド社、2009
  • R. バチェラー『フォーディズム』楠井敏朗他訳、日本経済新聞社、1998
  • ヴァルター・ベンヤミン『複製技術時代の芸術』佐々木基一訳、晶文社クラシックス、1999

2013年05月29日

建築ITコミュニケーションデザイン論, 2013-05-29

7 情報の反意語は何か

建築ITコミュニケーションデザイン論 第7回

本江正茂

2013年5月29日水曜日

日常語としての「情報」その意味の広がり:「情報」の反意語は何か?

情報という「概念に対して付与されるイメージが多様であるために,話が混乱することも少なくない。」「情報という言葉の与えるメンタルなイメージが,各人ごとに異なっている」点に問題がある。しかし「強引に(かつ一元的に)整理すると今度は「情報」という語の持つ立体性を損なう」。「根源的な問題はむしろ,何を情報と捉えるかという前提,考え方,世界観にあるのではないだろうか。」(田畑)

「現実」の反意語? 理想、夢、虚構(見田)

1. 情報 対 物質

  • 質料(しつりょう, matter)と形相(けいそう, form)/アリストテレス
  • 質料に一定の形を与えて、一個の現実的存在者として成立させる構成原理。これを、プラトンは事物から超越する原理とし、アリストテレスは事物に内在する原理とした。
  • 「青銅の球」では青銅が質料で球が形相
  • アトムとビット/ネグロポンテ
  • メディアとメッセージ=物質的媒体と内容

2. 情報 対 オリジナル(本源)

  • 何かの複製が情報である。
  • 「複製可能であり,かつ,複製された後もなおもとと同一の状態を保つようなものについて,その複製された内容である」(野口悠紀雄)
  • 言語やデジタル表現の場合,オリジナルとコピーの差がない。
  • 「シミュラークル」(ボードリヤール)
  • 「アウラ」(ベンヤミン)

3. 情報 対 現実

  • 現実 vs メディアが捉えた「疑似現実」(リップマン)
  • 「疑似イベント pseudo-event」(ブーアスティン)
  • real vs virtual

4. 情報 と ノイズ,

  • 情報とは「不確実性を減らすもの」(シャノン)
  • 意味ではなく正確な伝達にのみ関心。S/N比

5. データ,情報,知識,(知恵)

生な「データ」→加工→「情報」→分析・理解→「知識」→統合・連携→「知恵」

6. 情報 対 虚無

  • 情報一元論(すべては情報である)
  • (1)完全な情報一元論:世界のすべてが情報である。
  • (2)人間中心の情報一元論:「五感に感ずるあらゆるものが情報」(加藤秀俊)
  • Q:誰もいない森の中で木が倒れたとき,そこに音はあったと言えるか。
  • Q:誰も直接命じていないのに,コンピュータが勝手に蓄えて処理し,人目に全く触れる可能性さえもないデジタル符号は情報と言えるか?

情報の反意語の図示

  • 原点:「情報」
  • 横軸:抽象的か具体的か
  • 縦軸:完結的(自律的)か断片的か
  • 第3の軸:存在/非存在

情報と計算

物質とエネルギーから「情報」へ

  • アインシュタインの特殊相対性理論(1905)
  • ハイゼンベルクの不確定性原理(1927)
  • ゲーデルの不完全性定理(1930)

これら三つの理論はすべて「本質において,それらのおのおのは,論理分析と数学という道具を用いることによって,私たちの周りの世界について私たちが知りうることには限界があるということを主張」(カスティ)

「科学の焦点として,情報が物質とエネルギーに取って代わることの始まり」(カスティ)

[Claude Shannon『通信の数学的理論』 1948]

The fundamental problem of communication is that of reproducing at one point either exactly or ap- proximately a message selected at another point. Frequently the messages have meaning; that is they refer to or are correlated according to some system with certain physical or conceptual entities. These semantic aspects of communication are irrelevant to the engineering problem.

  • 「通信の基本的課題は、ある地点で選択されたメッセージを正確または近似的に別の地点で再生することである。」そして「意味」(=有用性)は関係ない。
  • あらゆる情報は数値に置き換えて表すことができる。情報の符号化。
  • 情報量=エントロピーは確率によってのみ決まる。
    • 事象Aが起きる確率P(A)の時、情報量 I(A)=log(1/P(A))=-logP(A)。
    • 起こりにくい事象(=生起確率が低い事象)の情報量ほど値が大きい。
    • 対数の底が2の時、単位はbit (または「シャノン」。あまり使われないが)
    • e.g. コイントスの情報量は1bit。
    • e.g. トランプでハートのエースを引く事象の情報量は log52=log4+log13=log(4x13)。情報量の加法性。
  • 情報エントロピーが大きい状態とはこれから得る情報のありがたさが大きいということ」(高岡p.67)
  • シャノンの通信モデル 価値ある情報を高速に正確に送る

「コンピュータ」の概念の変遷 鈴木健

(1) 万能機械主義の時代 1936-

  • チューリングマシン(1936) by Alan Turing。単純なルールでなんでも計算できるuniversalな仮想的計算機。プログラム自体をデータで示せる=チューリングマシン自体を数として表すことができる。
  • チューリングテスト(1950)知性のシミュレーション
  • AI: Artificial Intelligence 人工知能
  • 世界全体が巨大な計算機のうえのシミュレーションであるという思想。計算万能主義。

(2) 身体環境主義の時代 1968-

  • 身体をもった人間とインタラクションする相手としてのコンピュータ、HCI
  • [The Demo(1968)by Douglas Engelbart]
  • 「メディアをつくるメディア」「コンピュータ・リテラシー」「すべての人々がメッセージを作るだけではなく『メディアを作る』ことができるようになるためにはどうすればいいか」by Alan Kay
  • IA: Intelligence Amplifier 知能増幅
  • 身体=コンピュータ=環境 全体がひとつのコンピュータという思想。

(3) ネットワーク主義の時代 1995-

  • "The network is the computer" Sun Microsystemsの社是 (1982)
  • ["As We May Think" by Vannevar Bush (1945)]
  • 「コンピュータとは,「計算する機械」という意味から,「世界のなんらかの自然現象をノードとして切り出してネットワークでつなぎ,入力に対する出力として人間にとってある種の意味作用を安定的に形成できるもの」へと変容しつつある(鈴木, p.184)」
  • computer network > human network > social network e.g. 集合知,Wikipedia

情報と場所

  • これがあれを滅ぼす/ヴィクトル・ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』
  • 聖書がカテドラルを滅ぼす。
  • 情報は場所に依存しない? 情報の流動性,偏在性 vs 場所の固定性,唯一性?

Re-Place-ing Space

  • Space is the oppotunity; place is the understood reality.
  • While space have up and down, left and right, places have yesterday and tomorrow, good and bad.
  • Places, not spaces, frame appropriate behavior.
  • Places have social meaning.
  • The distinction is rather like that between a ""house" and a "home"; a house might keep out the wind and the rain, but a home is where we live.

参考文献

  • 田畑暁生「情報の反意語は何か?:反意語から捉える情報概念の構造」日本社会情報学会『社会情報学研究』第3号,1999.
  • 見田宗介『現代日本の感覚と思想』講談社学術文庫, 1995
  • ヴィクトル・ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』潮出版社 ,2000
  • Steve Harrison, Paul Dourish, Re-Place-ing Space: The Role of Place and Space in Collaborative Systems, CSCW'96, 1996, [http://www.ics.uci.edu/\~jpd/publications/place-paper.html]
  • ジェイムズ・グリッグ『インフォメーション:情報技術の人類史』新潮社, 2013
  • 高岡詠子『シャノンの情報理論入門』講談社ブルーバックス,2012
  • 鈴木健『なめらかな社会とその敵』勁草書房, 2013
  • ジョン・L.カスティ『プリンストン高等研究所物語』寺嶋 英志訳,青土社,2004
  • [Shannon, Claude Elwood, and Warren Weaver. The Mathematical Theory of Communication. Urbana: University of Illinois Press, 1949]

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