本日のハンドアウトは製作中。いずれこのページで公開します。
今日見せた動画は以下のとおり。
Ford T型を紹介する映像。機械としての自動車。馬車とは違い、機関車のように速く、段差も乗り越えて走れる。ただし、剥き出しの機械であって、生活になじむものではなかった。
1948年のオールズモビル(のちにGMの一部となる)のコマーシャル。機械そのものへの関心は後退し、ダイナミックで未来的な="futuramic"な、造形への関心が前景化し、安全性、快適性、豪華さなどが欲望の中心となっていく。
参考:futuramic はオールズモビル社の造語らしい。
剥き出しの、そのままでは生活のなかに入り込みにくい機械や電器製品を、どのように家庭の日常の中に組み込んでいくか、という課題に応えるべく、インダストリアルデザインが登場した。無骨であぶなっかしい機械を美しく使いやすいシェルで包むことが必要になる。
『口紅から機関車まで』で知られるデザイナー、レイモンド・ローウィーはストリームライン(流線型)でそれに答えた。流麗なパッケージでメカニズムを隠蔽し、その運動のイメージだけを抽象化して取り出す。あらゆる日用品がストリームラインのシェルで包まれる。それらの多くは板金のプレスでつくられていた。
ストリームラインとは違うデザイン言語で、複雑なメカニズムを包む方法を産み出したもうひとりのデザイナーはディーター・ラムズ。ラムズのブラウン社での仕事は、運動する大型機械ではなく、人が様々に操作する電器製品が中心であった。ミニマルでモノトーンの、プラスチックによる四角いパッケージに、均整よく配置されたスイッチやダイアル、目盛りや廃熱スリット、操作を指示する文字、アクセントカラーなどによるもので、量感のあるストリームラインとは対照的に、グラフィックデザインの仕事に近いものである。
BRAUNでのラムズの仕事は、APPLEに受け継がれたといえる。
アルミの厚板を削り出して、内部の機構を納める空間をつくりだす MacBook Unibody は、精度の高いマシニング加工の成果である。板金、成型プラスチックから、ユニボディーへと、パッケージの素材は生産技術とともに変化していく。
さて、ストリームラインとミニマリズムとは別の角度から、ハッピーでセクシーなデザイン言語を指向した、インダストリアルデザインにおけるポストモダニズム運動の中心が、グループ「メンフィス」を組織したエットーレ・ソットサス。
同じような複雑なメカニズムを包み込むにしても、ソットサスはラムズとは対照的に、楽しげでセクシーな色と形を使う。オリベッティのタイプライターはモダンデザインのアイコンになっている。
メンフィスは、きわめて自由な形態で様々な機能を包み込み、表情の与え方の可能性を拡げていったのだった。
先にUnibodyでみたように、アップルは製品の作り方においても果敢に先端的な生産技術を採用する。しかし、その大量生産を自ら行なっているわけではない。マーケティングとデザインをおこない、生産技術は開発するが、生産はしない。NIKEなどと同様に典型的なファブレス企業である。
実際に生産しているのは、中国深圳のFoxconn社。従業員24万人の巨大企業である。
フォーディズムから始まる、大量生産される複雑な装置を包み込んで生活環境になじませるシステムは、ここまできている。
さらにこの先に、パーソナルファブリケーション、ソーシャルファブリケーションとよばれる、生産と生活の新しい関係が現れはじめている。MITにfablabを開設した、ニール・ガーシェンフィールド。
ファブラボのアイデアを拡張していくと、デジタル錬金術というべきところまでいく。アトム(素材)とビット(設計情報)の分離が徹底されていれば、必要に応じていつでも物をその場で作り出すことができるという話になる。
理論的な可能性と、いまここで実践できるか、ということの間には大きなギャップがあるものの、ファブラボの思想の持っているラジカル指向については意識をしておく必要があると思う。
パーソナルファブリケーションは、工場における大量生産を補完する生産システムとして、一定の地位を占めていくことになるだろうが、その時、ブリコラージュ的に作られる無骨なメカニズムを、どのように包んだらいいのか、誰がそれをデザインするのか、という新しい問いが現れる。たとえ無骨であっても、それが自分でつくったものなら、そのまま自分の生活の中に引き受けていくことができるから、美しいシェルなど不要である、という意見もあるだろう。あるいは、ローウィーやラムズ、ソットサスがそうしたように、パーソナルファブリケーションに相応しいシェルのデザイン言語が開発されるのだろうか。
また、どんなふうに(how)作るか、から、そもそも何を(what)作るかへと、デザインの中心的な課題がシフトしてきているとも言われる。IDEOのワークショップは、たとえばショッピングカートのような日常的なものにも、イノベーションの余地があるのであって、その可能性を引き出すための検討のしかたにも相応しい方法論があるはずだと教える。キーとなるのは異なるバックグラウンドを持つ者どうしのコラボレーションである。
今日の講義についての参考文献についても追って掲載するつもり。
コメント (4)
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投稿者: HsZIZOcNcmMRshrJ | 2012年09月26日 17:14
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投稿者: NY | 2015年08月13日 00:19
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