Thirty-Six Views of the Eiffel Tower: A Turn-of-the-Century Tribute to the City of Light
19世紀末のジャポニズムの画家アンリ・リヴィエール[画像検索, 1864-1951]によって、葛飾北斎の富嶽三十六景へのオマージュとしてつくられた『エッフェル塔三十六景』。ジャポニズムの絵画というとゴッホやモネが浮かぶが、リヴィエールは、自身深く浮世絵を研究し、絵師、彫師、摺師をひとりで行なったという。
エッフェル塔の建設された時期は、すなわちパリが近代都市として急激に整備されていく時期であった。遠景に、時にクローズアップでエッフェル塔を構図に取込ながら、エッフェル塔そのものの工事の様子、たくさんの積荷を追ってセーヌ川を往き来する船、馬車、舗装工事、煙突の煙、庶民の暮らしぶりなどが描かれている。余白を大きくとり、画面をはみ出す近景をかぶせて重層性をもたせた構図などは、いかにも浮世絵らしいものだ。
塔の建設に都市の近代化を重ねる主題は,東京タワーやドバイでも馴染みのものだが、その原点となる構成である。東京スカイツリーの場合でも、それがよく見えるスポットを探すことを通じて、東京の下町の風景を再発見しようとする動きがあったように思うが、寡聞にして、ハイテックで巨大なタワーと親密な下町とのコントラストの強調にとどまるものしかみていない。あれば知りたい。都市の変貌のシンボルとしてのタワーというよりは、変貌できないままでいる都市との対比がむしろ顕在化していたのではないか。
この本は、ふと入ってみた古書店で目にとまって求めた。
そんな風にして、本を買ったのはなんだか久しぶりのような気がする。