を読む。著者で、本学に非常勤講師として「プロジェクトデザイン論」を御担当いただいている広瀬郁さんにご恵投いただきました。ありがとうございます。
全8回の講義・演習録という体裁で、建築をプロデュースするという仕事の全体像をつかめる入門書。前半がカネ、後半がヒト。
建築はモノだけれども、カネとヒトがなければ動かない。あたりまえに聴こえるが、どっから手をつけて考えはじめればいいかは、普通の建築学科では必ずしも教えてもらえない。教えてもらえないけど、卒業設計なんかで真面目に建築を社会の中にセットしようとすると直面せずにはおられない問題だと気付く。建築をつくるという営為の大元を議論するための、基本的な考え方をすんなりと飲み込むことができる、すぐれた入門書。
このタイプの本は、極端に簡単にしてしまって不正確になっていたり、複雑な概念群をセットで理解しないと結局わからない作りになっていたりで、なかなか学生にお勧めというものはなかったのだけれど、これはよいです。
途中のドリルをちゃんとやってみることをお勧めします。その上で、講義を聴きながら答え合わせをする。勉強の王道ですけど、よくできた問題がないとこれはできない。学園祭のノリのまま起業してしまったタコ焼き屋が、資金がショートして黒字倒産する瞬間に息を飲むことでしょう。
7時限めの企画書の構成などは、適当にぼかしてあるとはいえ、こんなの見せていいのかと思う大盤振る舞い。
建築を幅広く多面的にデザインする方法を学びたい人は、本書を読んだうえで、東北大学大学院都市・建築学専攻に入学するのがよい方法です。広瀬先生の「プロジェクトデザイン論」を履修できますしね。
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p.95 の写真に目薬が映ってます。
広瀬先生、くれぐれもご自愛ください。