を読む。
"アイデアキャンプ ―創造する時代の働き方" (中西 泰人, 岩嵜 博論, 佐藤 益大)
僕は小学生のころ,とても熱心に野球をやっていた。
まだJリーグもなくてサッカーはそれほど人気がなくて,圧倒的に野球だった。長島はすでに引退していて,国民的英雄は王貞治であり,田淵幸一や山本浩二がおり,星野仙一も現役だった。サードにコンバートされた高田の守備がすばらしかった。そんなころだ。リトルリーグというのがあるらしいことは知っていたが,田舎にはそんなのはなくて,放課後,学校にまた集まって,延々とやっているような野球だったが,それでも毎日日暮れまで飽きずにやり続けられるくらいには上達した。野球はある程度技術がともなわないと,やっていて面白くない。
僕は走るのも遅かったし,運動神経が良いほうではなかったが,本を読むのは好きだったので,すごくたくさんの野球入門書を読んだ。
サッカーに比べると野球はルールが難しいので,ルールブックも良く読んだ。タッチアウトとフォースアウトの区別がつかないガキ大将にその違いをくりかえし説明した。インフィールドフライがなぜ捕球しないうちにバッターアウトが宣言されるのかなどを図解したりしていた。
技術面でも入門書はたくさんあり,総論はもちろん,それぞれの守備位置についての入門書があった。福本の盗塁入門(柴田だったかも)とか,野球選手の似顔絵の描き方の本も持ってた。これも飽きずに良く読んだ。スコアブックのつけ方も当時は知っていた。全部忘れたけど。
変化球は少年のロマンだ。カーブのための握り方,腕のひねり方,ボールに与えられるべき回転,回転するボールが曲がりながら飛んでいくことと飛行機の翼が重力を越える揚力を得て浮揚することとは同じ原理によることなどを,僕は読んで知っていて,誰よりも詳しく説明することができた。
でも,僕はカーブを投げることはできなかった。
投球の組立上,速球が早くないのでカーブを投げる意味がないということもあったが,なにより実際投げても曲がりも落ちもしないので,それはカーブとは認められなかった。でも僕はそれほど悔しくなかった。カーブのことは理解していると思っていたし,それで満足だったからだ。そんな僕は,試合でピッチャーになることはついになかった。
『アイデアキャンプ』を読んでいて,僕は小学生の時に読みふけってた野球の入門書のことを思い出していた。とても詳しくわかりやすく,アイデアを出すためにしつらえられた環境に身を置いて考えるための方法が,道具が,実感にもとづいて詳しく示されている。この詳しさ,具体性,実践性。ちりばめられた蘊蓄の楽しさ。参照される理論の明解さ。ワクワクしながら読める。
でも,読んで知って,それで終わりにしてはいけないと,とうとうカーブを投げることのできなかった僕は思う。
「読んで知ってる」ということと,「できる」というとの間にはとてつもない大きなギャップがある。
このギャップを越えるには,くりかえし「やってみる」しかない。その先にだけ「できる」がある。
コメント (4)
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投稿者: qIqQjvDpNvuqAlHj | 2011年12月29日 22:47
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投稿者: NY | 2015年08月08日 18:11
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