『権力の館を歩く』
を読む。
東大で「建築と政治」という授業を担当している御厨貴による、日本の「権力」が使ってきた/いる建築論。
歴代首相の私邸、国会や首相官邸はじめ公権力の施設群、そして政党本部の3部構成。
「建築がそこで営まれている政治を規定しているのではないか。外面的には建築が建つ“場”の状況によって、内面的には建築の中の“配室”の状況や、さらには部屋内の机や椅子の“配置”状況によって、政治決定のあり方が決まってくる。(p.15)」
すわ「権力」のオフィスの詳細が明らかになると思いきや、やはりというかしかたないというか、対象の性格から詳細な図面が載っているわけではないのが不満ではあるが、工学部で習ういわゆる建築史には出てこない、建築技術とは違う側面からの建築史。このような建築書はもっとあってよい。
田中角栄以降の、私にとってはリアルタイムに知る首相たちの記述が、なにやら歴史的な響きをもって語られていることに、時の流れの残酷さを感じたりもする。当事者たちへの聞き書きをもってするオーラルヒストリーの方法にしてみれば、この光陰への焦燥はいかばかりであろうか。取り上げられている首相の私邸のいくつかはすでに焼け落ちてもいるのだ。