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2010年12月 アーカイブ

2010年12月10日

『権力の館を歩く』

を読む。


"権力の館を歩く" (御厨 貴)

東大で「建築と政治」という授業を担当している御厨貴による、日本の「権力」が使ってきた/いる建築論。
歴代首相の私邸、国会や首相官邸はじめ公権力の施設群、そして政党本部の3部構成。

「建築がそこで営まれている政治を規定しているのではないか。外面的には建築が建つ“場”の状況によって、内面的には建築の中の“配室”の状況や、さらには部屋内の机や椅子の“配置”状況によって、政治決定のあり方が決まってくる。(p.15)」

すわ「権力」のオフィスの詳細が明らかになると思いきや、やはりというかしかたないというか、対象の性格から詳細な図面が載っているわけではないのが不満ではあるが、工学部で習ういわゆる建築史には出てこない、建築技術とは違う側面からの建築史。このような建築書はもっとあってよい。

田中角栄以降の、私にとってはリアルタイムに知る首相たちの記述が、なにやら歴史的な響きをもって語られていることに、時の流れの残酷さを感じたりもする。当事者たちへの聞き書きをもってするオーラルヒストリーの方法にしてみれば、この光陰への焦燥はいかばかりであろうか。取り上げられている首相の私邸のいくつかはすでに焼け落ちてもいるのだ。

2010年12月16日

第2回SSDハウスレクチャー2010-12-21 池田修

SSDが一般公開で行なうレクチャの告知です。

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12月21日(火)にSSDハウスレクチャを開催します。
今回は建築家や写真家も参加するPHスタジオを率い、横浜を拠点に創造都市のポテンシャルを上げる活動体BankART1929の代表をつとめる領域横断型のアーティスト、池田修氏にお話を伺います。

「BankART 1929」とは歴史的建造物を活用した文化芸術創造の実験プログラムで、芸術文化の育つ場であるとともに、食に代表される生活文化や情報や都市、祭り、市場など、地域市民や専門家、海外の人材などの幅広い可能性を受け入れ開かれたものを目指す活動体です。

時間は19時開始(18時半開場)。
会場は仙台市卸町阿部仁史アトリエ(仙台市卸町3-3-16)。
入場無料(懇親会費500円)。
申込〆切は12月17日(金)。
lecture@sendaischoolofdesign.jp(阿部)まで。

SSDハウスレクチャー2010-12-21 池田修

2010年12月28日

『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』

を一気に読んだ。


"みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?" (西村佳哲)

『自分の仕事を考える3日間』シリーズの第2弾。『自分をいかして生きる』を読んでから一年になる。

かわらぬ西村節のインタビュー集なんだけど、構成がいままでとちょっと違う。

語り手ひとりひとりの区切りが弱い。

中扉もなければ、特に大きな見出しもない。
紹介もミニマル。本人に語らせている。
コンテクストがリセットされないまま、次の人の話がはじまる。

私はどんな本でも大抵、目次や前書き、後書きを先に読んで、全体の構造をおおよそ把握してから本を読みはじめる。地図を用意してから散歩に出かけるようなものである。今回もそうしたのだけれど、事前に用意した地図はあまり役に立たないまま、押し流されるように一気に読み終えてしまった。

抑揚がないというのではない。むしろその逆で、いたるところで、痛いところに刺さる——「西村好み」と言って良いと思うけれど——フレーズがちりばめられており、いちいちウウムとうなり、ひっかかりつつ読むことにはなる。だが、全体としての調子は整っている。転調しながら長く続く一曲の音楽のように読める。

これを著者本人は、あとがきで連山の縦走と喩えている。
その比喩はよくわかる。見出された地形の豊かさも、あとがきにある通りだと思う。

ただ私は、地形の豊かさに驚くよりも、その山岳ガイドの脚の速さ、足を着く地点の確かさに感心しながら読んだ。

本書は奈良の図書館でのフォーラムの記録なのだが、その参加者たちもきっと同じようなスピード感を感じていたのではないだろうか。それは喜ばしくもあり、難しくもある体験だろう。本当は途中で転んだりくじいたりしたのだろうから、そういう様子も見てみたいとも思った。

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