家で使っている椅子の籐編みの座面がへたってきた。腰掛ける度に、お尻の下で、ピチッ……ピチッ…と籐が切れていくのを感じる。いつかカタストロフが訪れるであろうことはあきらかだった。
家具屋さんに相談して、張り替えてもらうことにした。
インドネシア産の籐の品質がこの頃かなり落ちていて、もともとの籐編みだけの座面だとまたすぐに切れてしまう恐れがあるとのことで、少し高いのだが化繊のメッシュで裏打ちするタイプでお願いした。表面は籐だが荷重はメッシュで受けるのである。
家具に使う籐の品質低下は深刻で、天然の籐そのものをあきらめて化繊のテープを籐風に編んだものを使うようになったメーカーもあるそうだ。鳥居にかかるナイロンの注連縄も今では見慣れつつあるが、藁や籐など比較的マイナーな天然素材の質感に依存するプロダクトは存続の危機にあるのだろう。
さて、家具屋さんにあずけてから一週間ほどで帰ってきた。
正直いって、見た目、オリジナルの透ける感が失われてしまった感は否めない。白っぽい面が勝って見えてしまう。
座面の張りはかなり強く、お尻への反発も強くなっていて、これまでのキュゥとたわむ感じとは違う。テニスラケットに座ったような感じ。座ったことないけど。
それでも、こうして慣れた椅子に座ると安心感がある。