古本で『SIGHTSEEING』という写真集を買った。
中ほど、イースター島のページに紙焼きの写真がはさんであった。
床に白い敷物をして、球や円錐やらの石膏像をならべ、デッサンをしているところ。美大か予備校のアトリエだろうか。カメラを床において撮ったらしい構図。2007年に出た本の中にあったのだから古い写真でもないと思うが、デジカメではないようだし、プリントの裏面にタイムスタンプもないから30分プリンタでどんどん焼いたものではなく、もしかしたらフィルムから自分で焼いたものかもしれない。
古本の書き込みや栞に前の持ち主の気配を感じるのはいつもおもしろいことなのだけれど、この何気ない写真の持つ温度にハッとさせられた。
その場で起きている経験の中心から微妙に外れた位置に立って新しい景色をメタに見るという、この写真集の内容とシンクロする視点で撮られていることも、強い印象の理由だろう。もしかして狙ってそう撮った写真だったのかもしれない。
この写真集はとてもいい。観光地で、必死になって人のいない瞬間を狙い、絵はがきのような写真を撮って満足するのはなんだか妙なものだと、自分でもついそうしながら、ずっと不思議に思っていた。この手があるな。
金髪と金閣とか色の韻みたいなこともおもしろいけど、なによりいいのは、観光地で記念写真におさまる人たちが一様に心浮き立つ表情でいることだ。よい顔だ。