を読む。
"メイキング・オブ・ピクサー―創造力をつくった人々" (デイヴィッド A.プライス)
ピクサー設立からディズニーに迎えられるまでの物語。テクスチャマッピングやらレイトレーシングやら物理シミュレーションやら、コンピュータグラフィクスの技術開発と歩みを揃えてピクサーが進んできたことがよくわかる。
同時に、徹底的なリサーチに基づきつつ、誰もが楽しめるストーリーの構築がいかに丁寧に行われているかも面白く読める。「ニモ」のための海中のCG映像があまりにリアルで、魚のキャラクターが浮いてしまったので、より絵画的なものに調整した、とか、「この魚はこうは動かない」と粘る魚の研究者と、よりアニメらしいリアリティのある動作を求めるアニメータとの対立に、「そこまで言うなら、そもそも魚はしゃべらないぜ」とひっくりかえしたり。
ディズニーのアイズナー会長とスティーブ・ジョブズの確執など、クリエイティブ産業の経営バトル物語としても面白い。
ピクサーのアニメを劇場で観ると、いつも最初に単純なコントのような短編アニメがかかる。しかし、ピクサーにとって、技術開発とデモンストレーション、そしてスタッフのモチベーション維持のため、これら短編アニメの意義は非常に大きいようだ。
本書で言及される実験短編アニメのほとんどは、下記のDVDに収録されていて、読んでから見るとその位置づけもクリアになって興味深い。ピクサーの歩みについてのドキュメント映像もついているが、本書とはちょっとトーンが違っている感じ。
"ピクサー・ショート・フィルム&ピクサー・ストーリー 完全保存版 [DVD]" (ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント)