都市へ仕掛ける建築 ディーナー&ディーナーの試み|東京オペラシティアートギャラリー
内覧会を観る機会があった。
「D&Dにとって模型という抽象表現は、設計時にその建物の形状、規模やその位置等を客観的に検証するツールであり、それが都市空間にどのように働き掛けることができるかを表明するメディアです(ハンドブック, p.2)」という。
所員の木村浩之さんから聞いたところによれば、彼らのスタディは、なによりもまず敷地模型(1/500程度)を木か石膏できっちり作り、その中にボリューム模型を置いて、周辺の建築のマスとの関係が適切であるかどうかを検討するプロセスから始まるという。乱暴な言いかたではあるがと断ったうえで、室内はうまく分割しさえすれば施設用途には対応できる、と考えているのだそうだ。
第一展示室の木製の敷地模型群はその姿勢をはっきり示している。
併置された配置図を見なければ、どれが彼らの手がけた建築なのか、ひとめ見ただけではわからない。
壁面に掲げられた大きな写真は、外観と内部から窓の外を見た写真との対になっていて、模型が表明している都市空間の構成をアイレベルから補完する情報となっている。
次のセクションでは、コンペ提出図面がテーブルに並べられている。これをめくりながら読む。
つづく厚いカーテンで仕切られたセクションでは、ショートフィルムとスライドショーを見られる。
最後のセクションは、詳細図、詳細の模型、素材や部品などの検討プロセスが示される。
絢爛豪華なプレゼンテーションを見慣れた目には、おそろしく地味な図面であり、淡々とした映像であり、ほとんど学究的なトーンをもった無愛想な展示に見える。
アンチ・スペクタクルを徹底することによるスペクタクル。
しかしそこには、我々はこうやっています、というメッセージが非常に鮮明に表れている。そのメッセージは見る者に、とりわけその人が何かをつくる人であるならば、では私はどうやっているだろうか、という自問を引き起こすだろう。
ちゃんと見ようとすると、非常に時間のかかる展覧会であることを覚悟して行かれることをお勧めする。また、そうするのでなければ、出かけても意味がないように思う。
カタログは売られていないが、秋山伸の手がけた美しいハンドブックが配布される。隣接するショップのショーウィンドウは、D&Dの梱包材料を使った、秋山によるインスタレーション。熊がかわいい。