カルタイの準備をご一緒している情報科学のメディア論の関本先生からお知らせいただきました。
「学際という幻想──文理融合ではなく文理越境を──」というタイトルだけ見ると大学教育論にみえるけれど、キャリアの異なる様々なメンバーを入れて複合的な問題に取り組むプロジェクト論として聞けば、建築設計者とその志望者にも意義深い内容かと思われます。
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情報科学の学際性・文理融合の理念を人文系から実現しようと、現在「情報科学を拓く人文学的知の論論」というプロジェクトを推進していますが、この度企画のひとつとして講演会を開きます。
建築の学生にも有益なかつ啓発的な講演と存じます。講師もこの分野で先頭に立って大いに活躍している名のしれた先生です。
本江先生にも出席をお願いするとともに、お手数ですが、ぜひ建築の学生他に周知し出席を呼びかけていただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
関本 英太郎
日時:3月5日(水)、午後3時〜6時
場所:情報科学研究科棟2F中講義室
佐倉統(おさむ)
現在、東京大学大学院情報学環・教授。専門分野として科学技術社会論、進化生物学。
講演:学際という幻想──文理融合ではなく文理越境を──
講演要旨:学際研究や学際組織の難しさは、1960年代から指摘され続けている。
ここではその理由を、進化理論を知識情報に適用することで説明を試みる。学問領域は生物における種(しゅ)に相当すると考えれば、学際組織はすなわち異種間交配であり、子孫を残せないことになる。一方で、ラバのように一代限りの雑種は頻繁に生じることから、学際研究も現実の問題を解決するための短期プロジェクトであれば成功する可能性があると予想される。すなわち、課題志向型である。これは経験則には合致する。この考察が正しいとすれば、大学における学際組織は副専攻のような位置づけが良いのかもしれず、異なる領域を融合して新たな学問領域を形成するのではなく、既存の学問領域を越境していく方法と展望と知的体力を身につけさせることが重要であろう。