« 仕事はじめ | メイン | TypeTrace »

『アキッレ・カスティリオーニ』

を読む。


多木 陽介『アキッレ・カスティリオーニ―自由の探求としてのデザイン』AXIS出版、2007

工業デザイン、とくに照明器具や家具、それに展覧会のデザインに多くの傑作を残したカスティリオーニ。本書はイタリア在住の筆者が、入念なスタジオ取材を経て書いた、カスティリオーニの設計方法論集。

いわゆる作品集ではないので、他のもので作品をおさらいしてから読むとよい。(Paola Antonelli『Achille Castiglioni』Sergio Polano『Achille Castiglioni Complete Works (Electa Architecture)』は研究室にあります。)

ムツカシイお題目なしで、見ればわかる明快なデザイン。作品集の図版だけ見ていると、その明快さとユーモアがぐうっと前面に出てくる。だからこそ逆に、どのようなアプローチでこのデザインに至ったのかは、なかなか見えてこない。作品を楽しむだけでなく、どうやればこんなふうに作れるのか、を知りたい人には、どうしてこうなっていったのかを追究する本書は実に興味深く読めるにちがいない。帯を深澤直人が書いているけれど、深澤のデザインに共感できる人ならカスティリオーニにもきっと共感できるだろう。

眼鏡やハサミ、ハンマーなど、たくさんの道具をコレクションし、メリー・ポピンズよろしく鞄から取り出しながら、その有用かつ無駄のないデザインを猛烈な勢いで語りまくるカスティリオーニの授業、ぜひ聞いてみたかったな、と思う。 

ほぼ同時代だし、イームズとカスティリオーニの比較研究はやってみるとおもしろいかもしれない。暗闇でひとり対峙する映像作品に進んだ生真面目なイームズと、ずっと誰かとおしゃべりしていたいカスティリオーニ……みたいなステレオタイプにはまらないようにしなくちゃいけないけども。

本書で照会されているトリノのデ・アンジェ広場の交通再編成計画など、カスティリオーニの都市計画の仕事については全然知らなかった。駐車場と自動車動線に占拠されてしまった形ばかりの「広場」を再構築し、「歴史的スペースを自動車の下から発掘する(p.204)」という。このフレーズは、私たちが現在とりくんでいるキャンパスの駐車場再編成計画のスローガンにも使えそうだ。

ミラノにあるカスティリオーニのスタジオは、その作業環境そのものを作品とし、博物館として公開されているそうだ。ワークプレイスの動態保存である。ぜひ、見に行かねばなるまい。

About

2008年01月07日 18:17に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「仕事はじめ」です。

次の投稿は「TypeTrace」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。