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2008年09月 アーカイブ

2008年09月01日

『ウェブ炎上』

を読む。


"ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書 683)" (荻上 チキ)


サイバーカスケード現象を解説。いろいろな事件の記録があるのが懐かしく面白い。7割ぐらいの「事件」や「祭り」はリアルタイムで見ていた記憶がある。7割ぐらい、というのが多いのか少ないのか、自分では評価できない。

まとめの結論として、次のように書かれる。トリッキーだが、言いえて妙。



  • これまでに起こってきた現象が、これからも形を変えて起こり続ける。
  • これまでに起こってきた現象が、これからは形を変えて起こり続ける。
(p.213)

インターネットにおいては「法の完全実行」が可能となる結果、「法の過剰」が起きることが懸念される(p.182)が、さらにその先には「道徳の過剰」も懸念される(p.184)といった指摘や、「動機の語彙」(社会に存在する動機に関する類型的な語彙)と同様の「批判の語彙」(p.192)、その「誤配」など、コミュニケーションに関する社会学の概念を用いて、ネットの危うさをきれいに整理して示してくれている。希望に加担する形で。

『ケータイ小説的。』

を読む。


"ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち" (速水健朗)

「被差別小説」たるケータイ小説について、そのマーケティング論でもテキストそのものの読み込みでもなく、それが生まれる培地としての地方の郊外に顕著なヤンキー文化についての論考。浜崎あゆみ、ヤンキーの聖地回復、再ヤンキー化、東京に行かない感覚、電車に乗らない感覚、地元つながり、自分語り、ホットロード、ティーンズロード、NANA、ショッピングセンターなど。

郊外研究者必読。
郊外にはこういう人たちが住んでいる。
こんなのあたりまえと思うか、違和感があると思うか。
私は世代的にギャップのほうが大きく感じたが、日常的に散見される現象が、よく説明されているように思われ、いちいち腑に落ちた。

隣の五十嵐太郎研究室でヤンキー研究にとりくんでいるはず。

著者のブログの、ファミレスは個室居酒屋とSCのフードコートに駆逐されるであろうという記事もおもしろかった。


その日のために、僕はファミレスが登場する漫画や小説をコレクションしているので、10年後にはファミレスアンソロジーを編纂したい。


[From 【A面】犬にかぶらせろ!: ファミレスはもう手遅れになっている 33 users(推定)]

期待したい。

2008年09月02日

日本一展、大西麻貴評

大西麻貴が卒業設計日本一展のレポートを、ギャラリー・間のウェブサイトに書いている。

展覧会のオープニングレセプションで、直接出展者と出会って私がとても勇気づけられたのは、一度終わってしまった卒業設計と半年間の間、否がうえにも向き合うことによって、彼ら自身が悩みながらも柔軟に自らの考えを更新させ、今にも次の興味、次の段階へと飛び立とうとするように感じられたことだ。

[From GALLERY・MA/ギャラリー・間 展覧会レポート 卒業設計の先に]

仙台での決定戦から半年後の展覧会であることの意義をもっと打ち出すべきだという指摘には同意だ。作品としていったん定着したものだから不用意に改訂するのはいかがか、という態度もあると思うが、見せ方のフォーマットも違うのだし、その間に新しく考えることも多いのだから、新しいバージョンをつくるつもりでやったらいいのだ。

バージョンアップとは、何を残し何を加え何を捨てるかの判断の結果だから、作家の姿勢は作品そのもの以上にそのプロセスによりよく表れる。新しいバージョンがいいとは限らない。特にバグフィクスにとどまらない、仕様変更を伴う場合には「台無し」になってしまうものも少なくない。経験的には、だぶついて魅力を失うことが多いだろう。

2008年09月10日

むしろ初学者のために3D CADを使う

グラフィソフトの桐木さん(京都工業繊維大学山口研のOBでもある)を講師にお招きしての、既報のArchiCADワンデーワークショップの一回目を終了。

ArchiCADのハンズオンセミナー用の教材にそっての桐木さんの手慣れた進行に、本江と小地沢さんがチャチャをいれながら進むという構成。

ArchiCADやRevitなどの3D-CADというと、手戻りなく矛盾のない建築設計図書を調えることができるドキュメント・プロセッサとしての性格が強調されることが多く、したがってプロ向けのものであり、初心者というよりはひととおり建築設計のプロセスを身に付けてから触れるべきものであるから、大学でやるとするとまあ3年生ぐらいから、とされることが多いのだけれども、様々なスケールの平面図や断面図、立面図、パース、表などが、整合した状態を保ったまま編集されていく様子をあらためて見てみると、これをむしろ初学者むけに使うというプログラムがあってもいいのではないかと思われた。3D CADを初学者に最初から使わせることで、平面と断面と立面と透視図はリンクしているのだという実感を与えながら課題を進めることができるのではないか。

建築は立体なのだから、平面図だけ描くのではなくて、断面図も立面図もパースも、並行して描いていって、常に立体の状態を想像しながらスタディしなさい、プランしあげてから立ち上げただけの「できちゃった立面」は許さん!みたいな話は、どの学校でも一番最初の設計課題でタコができるほど聞かされるだろう。でも、手が動かない人にはこれが難しい。

敷地にマッスをおいてみた段階から、自動的に各種図面が姿を現しているのを確認し、様々な視点からの図面をあちこち編集し変化を確かめながら、徐々に全体の精度を高めていくというプロセスは、3D CADならではものであって、何度も図面を書き直すことになる手描きでは不可能なやりかただろう。建築の設計ってのが、建築をつくるための情報を整合した形でとりまとめるという情報処理のプロセスなんだってことが、わりとすんなり理解できるのではないかな。

そのためには、プロの精緻な要望に応えるうちに膨れ上がっていったコマンド群とパラメータ群を適切に間引いて隠蔽し、ごくごくシンプルなクラスだけを限定的なコマンドだけで使うことができるようなインタフェイスを用意してやることが必要だろう。携帯電話のらくらくホンみたいなことだ。壁と開口とスラブのクラスさえあれば、公園のキオスクの課題ぐらいはできるのだから。

柱一本を定義するためだけに表れる、画面におさまりきらない巨大なダイアログボックスにびっしりと並ぶ入力欄を見てしまうと初学者は萎える。実現したいことに効いているパラメータに目星をつけたり、まだ決めなくてよいところは適当に無視するというのは非常に高度な技なのだ。その点、Google SketchUpはなによりコマンドの少なさにおいて優れている。

CADの入門コースというと、「とにかく触ってみましょう式」のものが多いのだが、パソコン初心者でもないのだから、むしろオブジェクト指向の諸概念、クラスとインスタンスとか、きちんと説明してからのほうがいいのかもしれないと思ったりもした。そのあたりの概念を理解しないと、データベースとして「よい」モデリングをやるのが難しくなってしまうのではないかなあ。その上で、(原理的には)クラスそのものもユーザが定義しうるものであることは意識の中にいれておかないと、よく言われるような、ソフトウェアが定義しているクラスに思考が拘束されてしまう側面ばかりが強調されてしまうことにもなろう。

コンテンツと見た目とが、それぞれ独立したものとして記述されるというのも、概念先行で教えたほうが早いだろうな。これは日常生活に適切な例がないので、喩え話が難しいのではあるが。

とりとめないが、演習につきあいながら設計教育とCADのことをいろいろ考えた一日であった。

夏休み中ということもあって参加者は少なめ。参加しなかった諸君、もったいないことをしましたねえ。次回9月26日の席はまだ空いていますぞ。

2008年09月21日

広島

建築学会の大会で広島に行ってた。来年は我々がホストになって東北大学でやるので、その様子見もかねて、いつもなら見に行かないようなところもひととおり見てきた。

学会に行くとご無沙汰している方々にいろいろ会うので、無音をわびるご挨拶をあちこちで。学会の会場にはこうした社交にふさわしいパブリックスペースが必須である。広島大学のキャンパスは(文字通り)広大で、こうした空間にことかかないが、うちのキャンパスでは十分でないのが心配だ。

台風が近くにいた日程だったが、幸い大雨には降られず。

2008年09月30日

バルセロナの bicing

今期の国際建築ワークショップの準備のため、バルセロナに来ています。
そのため連絡がつきにくくなっていますが、ご容赦ください。

バルセロナは一昨年以来ですが、今回やけに目に付くのは、赤いフレームに白いホイルカバーのついたミニベロ。これは公営のレンタルバイク。
www.bicing.com
英語の情報がないので詳しくはわからないのですが、現地の人に聞いた限りでは、居住者専用で観光客には使えないようです。

同様のシステムは、フランスのモンペリエにも導入されていました。
Vélomagg


BIACS3

biacs3

2008年10月スペイン セビリアで開かれるビエンナーレに、阿部仁史との共同制作によるMEGAHOUSEを出展します。

今回はツオルフェラインやカルチュラルタイフーン2008 in Sendaiで行ったような、四面スクリーンのインタラクティブな展示ではなく、WOWLABと共に新しく制作したMEGAHOUSEのエコロジーを説明するモーショングラフィクスがメイン。

かなり大規模なメディアアートと建築の展覧会になっているようなので、たいへん楽しみ。

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