« 2008年01月 | メイン | 2008年03月 »

2008年02月 アーカイブ

2008年02月04日

映画「ふみ子の海」

映画「ふみ子の海」を見た。仙台の桜井薬局セントラルホールにて。アンコール上映の初日。ほぼ満席。ここはシネコンじゃなくて映画館らしい映画館。トイレが狭くて入り口に段差があったり売店の在庫がロビーにはみだしていたり、施設としての古さは否めず。途中、フィルムが止まるトラブルもあったが、それもまた映画らしいトラブルか。

戦前の新潟を舞台に、貧しさ故に盲目となった少女が、しかし持ち前の努力と周囲の人々の応援で、差別を乗り越え、自立していく物語。按摩の師匠役の高橋恵子が素晴らしい。盲目の役なので表情の演技は抑制されているのだが、きりりと動く所作は実に厳しく美しい。主演の鈴木理子も、いかにも健気で利発な少女を好演している。四季の景観の捉え方や、軍人が差別の権化として登場するあたりなどはステレオタイプ的なところもある。

麩職人や芸者、僧侶、本家の旦那、お嬢様の先生など、厳しくはあっても優しい人ばかり。悪人は出てこない。ふみ子本人の、というよりも、ふみ子の力をリスペクトする人々の物語。差別の反意語は単なる平等ではなく、相互の承認と敬意なのだろう。

私には、劇中にあるような寒さとひだるさの感覚を、たとえば新しい雪下駄の嬉しさと、しかし素足の冷たさとを、わが事としてリアルに想像しきれていないところがある。それは喜ぶべき社会の達成には違いないのだが。

せめて、次の花の時期には、噛んで味わう舌での花見、試してみたい。

卒業設計日本一決定戦 作品登録締切せまる!

全国で建築の卒業設計にとりくんでおられる皆さま

せんだいデザインリーグ2008 卒業設計日本一決定戦の作品登録締切が2月10日にせまっております。

搬送システム運用の都合上、作品登録の締切が早まったそうです。
メンバー登録済のみなさま、ご注意ください。

「GoogleMapsは建築にどんな影響を与えますか?」

という記事を、『10+1』49号に寄稿しました。「現代建築・都市問答集32」という特集です。

GoogleMapsの地形表示とMy Locationという二つの新機能は、いずれもワールドワイドウェブの情報的論理的空間を、より具体的な手触りをもった形で物理的身体的な空間で結びつけようとする試みだと考えることができるように思われる。 「世界中の情報を整理し,誰からもアクセスできるようにする」を社是とするGoogleは、通常のWebページをクロールし続けるのはもちろんのこと、大学等の図書館と提携し、かつて紙に印刷された書物を精力的にスキャンしてデジタル情報化し、自らのデータベース空間を拡大し続けている。その版図を拡大し、いまだ整理されていない情報を獲得し、さらなるデータベースをさらに充実したものとしたい。そのためには、模糊として表現されずにあったなにものかが、情報として切り出される現場に立ちあい、それが産出された瞬間につかまえること、がひとつの方向性であることは間違いない。その時、Googleは、人間が住まう物理的身体的空間へのコミットをさらに深めていくことになるだろう。 (中略) これらのサービスは、いずれもユーザーたちがコミットしあうことで産出される、場所の意味に注目している。Googleは、あるいはGoogleにかぎらずネットワークの記憶機械たちは、人間によって場所が記号として表現され、場所の意味が産出される瞬間に、それらを集めてしまおうとしている。データベースに取り込んでしまえばこっちのもの。相互に関連付けられ、無限の関係性がデザインされ再生産されていく。

※本江正茂「GoogleMapsは建築にどんな影響を与えますか?」、pp.140-141、『10+1』49号、INAX出版、2007


……みたいなことを書いてます。

掲載誌は研究室にあります。

2008年02月05日

レリーズボタンの重さを調節する

サービスがあることを知る。リコーがやっている。

レリーズボタン(シャッターボタン)を押す際の力量(重さ)を3段階「軽め(-2)・やや軽め(-1)・(標準)・重め(+1)」で微調整いたします。サービスセンター窓口にご用意しております3台のサンプル機にて実際にご確認いただけます。

製品情報 / GR DIGITAL II カスタマイズサービスのご案内 | Ricoh Japan

shiology: 1173-080202 軽め」で、その意義も含め詳しく紹介されている。デジタルカメラのシャッターボタンの重さにも好みがあり、それは撮れる写真の出来に直接、関わっている。

私はこのカメラはもっていないけど、とても羨ましい。

2008年02月12日

OmniFocus

年をとると新しいソフトを使いはじめるのがだんだん億劫になってきてしまう。新しい考え方の枠組みを理解するのが面倒になるからだ。そこをなんとかがんばって、ひさびさに新しい頭の組立を要するアプリケーションに取り組んでみている。

OmniFocus はGTDベースのタスク管理ソフト。v.1.0。

怠け者を許してくれない世界では、誰でも否応なく次々とプラグが刺さって、並行するたくさんの案件を抱える。ふと、えーと、あと何すればいいんだっけ、と考えてしまう時間が増えてくる。そして、すっかり忘れてて大慌て、という失態を重ねることになる。

スケジュールの管理は誰でもやるが、タスクの管理は案外ちゃんとやられていないのではないか。

ただ、新しいソフトを理解するというタスクの負荷が非常に大きいという矛盾がある。デモビデオやマニュアルも英語だしさ。

2008年02月17日

耐震診断




耐震診断のために畳をあげた


Originally uploaded by Masashige MOTOE.



耐震診断を受けた。

うちは借家なので費用負担は大家さん。店子の我々は押し入れなんぞを必死で整理して待っているばかり。診断士さんは黄色いビートルでやってきた。



畳を上げて床下をチェックしようとしたところ、図面にはない位置に根太が通っていて中に入れない。台所の床下収納を外して、そっちから入ってもらった。



雪の寒い日に、床下までもぐりこんで見ていただいた診断士の方に感謝。



正式な結果は二ヶ月後ぐらいらしい。屋根裏や床下の写真をテレビにつないで見せながら、診断士さんはかなり率直な感想を述べられた。ううむ。



昭和五十三年建築。

いよいよ寒さが募る日曜日となった。

2008年02月22日

春の告白 2008

4年目の春の告白 2008

手袋脱いでメールを見れば
「春の告白はじめます」

登録すれば雅な号が
いただけるのもお楽しみ


2008年02月24日

『空間の経験』

を読んでいる。
研究室のWRDG関連メンバーによる読書会形式。


イーフー トゥアン『空間の経験―身体から都市へ (ちくま学芸文庫)』

現象学的地理学の古典。
1977年に原著、邦訳は1988年。

この本の多くの章では、博覧強記の著者が様々な事例を列挙しているので、ロジックを丹念に追うというよりは、その多数多様な事例をどのようにマッピングするか、を意識しながら読むことになる。そのような読みの姿勢自体が、歴史的であることと対比して、地理的な姿勢なのである。

2008.2.22
3 空間・場所・子供/発表担当:須藤春香
4 身体・人間関係・空間の価値/発表担当:横山公貴

2008.3.4
6 空間の能力・空間の知識・場所/発表担当:本間茂樹
7 神話的な空間と場所/発表担当:阿部篤

2008.3.6
12 可視性——場所の創造/発表担当:後信和
13 時間と場所/発表担当:池田晃一

この読書会は開かれたものなので、関心のむきは本江まで

読まないと書けない。

学生の個別面談をしてみると、うまく作文できないと悩む者が多くいた。

作文は、かなりの部分はテクニックの問題であって、そのためのマニュアル本はいっぱい出ている。
たとえば、本多 勝一『日本語の作文技術』の、読点「、」の打ち方に関する技術を体得することは有効だろう。

しかしなによりも、絶対的な読書量が足らないのだと思う。
書くためには、その数百倍、読まねばならない。

継続的な読書を習慣づけるために、私がやっていることを簡単に紹介する。

かかわりながら読む。
古本でよい。なるべく自分で買う。で、書き込みをする。斎藤 孝『三色ボールペンで読む日本語 (角川文庫)』など参考にしつつ、意識的に書き込みながら読み進める。借りてる本のときは、重要なところを指差して、デジカメで写真を撮る。あとで論文なので引用する時には、どの本の何ページに書いてあったかを示す必要があるから、ノンブルも写るように。昔ならカードに書き写したところだが、そうしてるとスピード感が失われて辛いこともある。読むのは受動的な作業だから、ぼんやりしててもページが進んでしまうときってのがある。能動的に書かれている内容にコミットしながら読むべし。

複数の本を同時に並行して読む。
硬軟新旧取り混ぜて、その時々の気分にあうものを手に取る。軽いものばかりページが進むだろうけど、それでもよい。専門に特化した本だけを読んでいても、これってあれと関係あるじゃんという柔軟なリンクの発見はできない。

読みにくければ、ためらわず途中でやめる。
読みはじめたら、つまらなくてもわからなくても最後まで読み通さないと敗北感を感じるという人が時々いるが、これは間違った態度だと思う。内容を理解するためには、読み手の側の文脈が必要であって、読めない時は読めない。機が熟すのを待って、次の本を手に取るのがよい。複数の本を並行して読むのは、こうした純潔主義を克服するためでもある。

フォトリーディングをする。
ずっと前に紹介したフォトリーディングだが、いまでも飽きずにやっている。内容が頭に入るかどうかは別として、私にとっては、新しい本を読みはじめる前の儀式のようになっている。フォトリーディングについて西村佳哲さんに話したら、「内容に入る前に、まず自分と本との関係をつくりだすってのはおもしろいですね」と言っていた。そういうことである。

普通のことばかりなので、あらためて大学生にむかっていう話でもない気がするが、ともかく、読まないと書けない。読むべし。

催事告知:知的創造活動のためのワークスタイルとワークプレイスの試み

いよいよ明日。
事前申し込みなしで当日直接お越しいただいても、入れます。

開催が迫っておりますので再告知。
まだ空席あるようですので、こぞってご参加ください。

先進的なワークプレイス・デザインの実践者を集めたシンポジウムが開かれます。非常に興味深いワークプレイスの事例ばかり、それを作って使っている当事者から話を聞けるという好機です。
ぜひご参加ください。

日本建築学会 ファシリティマネジメントシンポジウム
知的創造活動のためのワークスタイルとワークプレイスの試み

知的創造活動の重要性に対する関心の高まりから、わが国でも 働き方やそれに対応するオフィスの計画でユニークな試みが見られるようになってきた。
それらの事例を通して、今後のワークスタイル、ワークプレイスのあり方を探る 。

(1)主旨説明
小鷹義和 (ソニーファシリティマネジメント)
当小委員会ファシリティ・デザイン&マネジメントWG主査

(2)講演
1.FA制、フリータイムにふさわしい 「新しい常識のオフィス」とは
宮本之 (寺岡精工)

2.場の再生と知識創造
佐藤直基 (日立ハイテクノロジーズ)

3.ボーリング場×創造的破壊=?
高橋英二 (TBWA/HAKUHODO)

4.ユビキタス的働き方とセキュリティ
阪口信貴 (日本IBM)

(3) パネルディスカッション

(4) まとめ
沖塩荘一郎 (東京理科大)

日時:2008年2月25日(月)13:30-17:30
会場:建築会館ホール 東京都港区芝5-26-20
参加費:日本建築学会会員 2000円、登録メンバー 2500円、後援団体会員 2500円、会員外 3000円、学生 1000円。※資料代含む。

申し込み方法:emailにて、催し物名称、会員番号、氏名、勤務先、所属、電話番号、メールアドレスを明記のうえ、お申し込みください。
申込先:日本建築学会 研究事業G 伏見(fushimi@aij.or.jp)

主催:(社)日本建築学会情報システム技術委員会情報社会デザイン小委員会
後援:(社)日本ファシリティマネジメント推進協会、(社)ニューオフィス推進協議会、 日本オフィス学会、ビジネスプロセス革新協議会

案内チラシをダウンロードできます。


本江はこの主催の委員会のメンバーで、このシンポジウムでは資料作りなどを担当してます。

追記:本番を無事終了。70名ほどにご来場いただき、席は埋まった感じになって安堵した。建築学会の会員外の方にも多くお越しいただいた。ありがとうございました。

それぞれの事例についてはなんとなく知っていたけれども、こうしてまとめて話を聞くと、また違う回路が開かれてくるようでおもしろい。

知的創造性を高めるために新しいオフィスをつくった、という話が続く。ちょっと前なら、変えることそのものへの抵抗をいかに克服するか、が問題になったと思うのだが、変えた後にはじめてあらわれる抵抗あるいは不満のありようが注目されるようになった。これは、メガフロア的なオープン・オフィスが異様なものではなくなり、その成否を冷静に評価するフェーズになっていることを示しているのだろう。質疑でも、その成否をどのように定量的に評価しているか、という質問が出ていた。いくつかの指標となりうる数値が示されたが、決定的なものはやはりないのだった。

Workplace diversity についても話題になった。普通は、年齢や性別、国籍、身体障害等、ワーカーの多様性への対応をいうのだが、これらに加えて、性同一性障害なども視野に入りつつあるそうだ。その先には、ワーカーひとりひとりのパーソナリティの多様性にいかに対応するか、という問題が出てくることは間違いない。うちの研究チームでも、この辺のことに対応できる実験を設計してみたいと思う。

ここで紹介されたオフィスはいずれも広くフラットでオープンで、人々の偶発的な出会いを称揚し、混ぜ合わせることで相互作用を引き出そうという思想を共有している。従来が閉じた個席だけの空間だったのに対して、オープン一元論だといってもいい。高橋さんが紹介していたように、こういう空間に堪えられない「ひきこもり体質」の人というのは必ずいる。天才コピーライターなら特別な個室を得られるのかもしれないが、普通の人でもそうできるのか。オープンにはなっても、一元論であることにはかわりはない。

また、どんなに刺激的に作っても、すぐに慣れてしまうから、定期的に変更することが必要だという議論もあった。小売店だけでなく、オフィスもまた消費される空間として認識されているのである。

2008年02月26日

hotspot bookmarklet

iPod touchで無線LANのブラウザ認証を楽にするbookmarklet - おぎろぐはてな

iPod touchでmobilepointなんかの公衆Wifiにつなごうとすると、いちいち認証しないといけない。キーチェーンもないし、コピペもできないしで、いちいちいちいち面倒で、メールみるだけだったら携帯電話のほうが断然楽じゃーん、となっていた。

しかし、世界は変わった。
ログイン画面からブックマークレットを呼び出すだけでOK。
すばらしい。感謝、感謝。

ただし、IDとパスワードがむき出しになるので、注意。
せめてもと iPod touch にパスコードをかけた。

音響兵器 Mosquito

高周波の音で若者たちを撃退する装置『Mosquito』が議論に | WIRED VISION

年をとると高い音が聞きづらくなるのを利用して、若者だけに聞こえる高い不快な音で、若者を追い払う装置。人権的にどうよ、との声が上がっているらしい。

私にはもう全然聞こえない(哀)
帰ったら子供に聞かせてみよう。

しかし、この高周波でカンニングされると、ロートル試験官には発見というか発聴できないってことだな。子供が集まるイベントへの音響テロなんてのもありうるな。

2008年02月28日

催事告知:佐倉統さんの講演会

カルタイの準備をご一緒している情報科学のメディア論の関本先生からお知らせいただきました。

「学際という幻想──文理融合ではなく文理越境を──」というタイトルだけ見ると大学教育論にみえるけれど、キャリアの異なる様々なメンバーを入れて複合的な問題に取り組むプロジェクト論として聞けば、建築設計者とその志望者にも意義深い内容かと思われます。

 情報科学の学際性・文理融合の理念を人文系から実現しようと、現在「情報科学を拓く人文学的知の論論」というプロジェクトを推進していますが、この度企画のひとつとして講演会を開きます。
 建築の学生にも有益なかつ啓発的な講演と存じます。講師もこの分野で先頭に立って大いに活躍している名のしれた先生です。
 本江先生にも出席をお願いするとともに、お手数ですが、ぜひ建築の学生他に周知し出席を呼びかけていただければ幸いです。
 よろしくお願いいたします。

                           関本 英太郎

日時:3月5日(水)、午後3時〜6時
場所:情報科学研究科棟2F中講義室

佐倉統(おさむ)
現在、東京大学大学院情報学環・教授。専門分野として科学技術社会論、進化生物学。

講演:学際という幻想──文理融合ではなく文理越境を──

講演要旨:学際研究や学際組織の難しさは、1960年代から指摘され続けている。
ここではその理由を、進化理論を知識情報に適用することで説明を試みる。学問領域は生物における種(しゅ)に相当すると考えれば、学際組織はすなわち異種間交配であり、子孫を残せないことになる。一方で、ラバのように一代限りの雑種は頻繁に生じることから、学際研究も現実の問題を解決するための短期プロジェクトであれば成功する可能性があると予想される。すなわち、課題志向型である。これは経験則には合致する。この考察が正しいとすれば、大学における学際組織は副専攻のような位置づけが良いのかもしれず、異なる領域を融合して新たな学問領域を形成するのではなく、既存の学問領域を越境していく方法と展望と知的体力を身につけさせることが重要であろう。

2008年02月29日

Nokia - The Morph concept

Nokia - The Morph concept
ナノテクで七変化のコンセプトモデル。MoMAの“Design and The Elastic Mind” にも出展されているらしい。
ともかくデモビデオを見よう。

『エクサバイト』

を読む。




服部 真澄『エクサバイト』角川書店 、2008


人々が見たものをすべて記録する「ユニット」を装着しはじめた時代、いってみればライフログ社会におこりうる事態の思考実験としてはおもしろく読めた。

伊坂 幸太郎の『ゴールデンスランバー』と読後感が似ているのはなぜだろう。サゲが似ているからか。

About 2008年02月

2008年02月にブログ「Motoe Lab, TU」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2008年01月です。

次のアーカイブは2008年03月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。