仙台文学館にて開催中の展覧会。
友人Kに教えてもらって、出かける。
閉館間際。夕闇。
携帯電話のカメラで「ピロピロリン」と大きな音を立てて次々と写真をとりまくる女子大生の無遠慮な振る舞いの、しかしすごく真剣に没入している様子がおかしく、笑いを殺しながら、澁澤の遺稿の、思いの他子供っぽくて円い、鉛筆書きの文字を追う。
子どものころ父親のカフスボタンを呑んで騒ぎとなった経験が、高丘親王に真珠を呑ませるエピソードにつながったという。自身で入院した最後の病室を「呑珠庵」と号した。ドンジュアンといえば伊達男ドンファンのこと。余裕のある患者だこと。咽喉のガンを切ってからは声が出ず筆談で通した。その筆蹟も展示されている。
家に帰り、『高丘親王航海記』を探すが見つからない。
白と金の堅い箱に入った本だったはずだけれど。