ある大会社の新しいデザインセンターの写真をみせてもらう。竣工したてで、まだ家具などは入っていないがらんどうの状態ではあるが。
近く発表されるはず。施設の性質上、使い始めたら見学は無理だろうな。
一体感のあるオフィス空間をいかに立体的に獲得するか、という問題への回答。
100×80mのフットプリントの上に、ゆるやかな雛壇を成すように7枚の床を重ねる。
その雛壇と同じ勾配で、ガラスの大屋根を架けて、斜めの巨大なアトリウムを成す。
掛川市庁舎は短手の段々だが、これは長手が段々になっている。プラスチックのカバーがついたままのの七枚歯の安全髭剃りをご想像いただきたい。
雛壇は南面している。北側は垂直に裁ち落とされていて、部分的に垂直なアトリウムもある。
延床2万平米。今は1000人。いずれ2000人を収容。
一番底はギャラリーで、自社の開発中の製品や、競合の製品がならぶ。
各階の段鼻の部分は、アトリウムに開かれたコミュニケーションスペースになっていて、どの階からも斜めにずっと底のギャラリーまで見下ろすことができる。ガヤガヤした声がアトリウムに響くのだろう。
雛壇てのは、平土間とは違って、グループ全体のまとまりと同時にひとりひとりの顔をハッキリと見せるための集まり方を可能にする形式である。ひとりひとりの顔が見えるのは、皆同じ方を向いているからだ。
この雛壇オフィスは、全体のまとまりのなかで、それぞれよく見える個々の顔が、揃って同じ向きを向く、そういう空間の形式を持ったオフィスとして構想されたものなのだろう。まあ、比喩だけど。
比喩ついでにいえば、本物の雛人形でも記念写真でもいいのだけど、その雛壇の同じ向きの視線の先で、その視線を集め受け止めているもの、「カメラ」に相当するもの、それが何かてぇのも考えとかないとな。空間の設計者は、ついつい、断面の形式がよくわかる位置に、つまりカメラじゃないところに、身を置いてしまうんじゃないかと思うので。
大きなワンルームに多くの人を同時に収容する建築は増えてきているように思う。そこに集まる人々の顔の見え方と向き、そのばらつきに注目して、集まり方のタイポロジーを考えてみることには価値がありそうだ。