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『社員をサーフィンに行かせよう』

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イヴォン・シュイナード『社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論』

アウトドア用品メーカーのパタゴニアの創業者、イヴォン・シュイナードによる経営論であり企業理念論。パタゴニアは株式公開をしないことにしており、シュイナードは創業者にしてオーナーである。MBA(Management By Absence 不在による経営)を標榜し、今も自らサーフィンや釣を楽しんで、その現場でおきている出来事を会社に持ち帰るビジョナリーである。

だからこそ、地球環境の異変にもいち早く気付き、企業としてなすべきことをやろうとしてきた。「健全な地球がなければ、株主も顧客も社員も存在しない」からである。彼らは、利益ではなく売上げの1%を環境保全運動に寄付するという「税」を自らに課している。

パタゴニアのミッション・ステートメントにはこうある。

最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する(p.107)

原題は、Let my people go surfing だ。当然、my people は社員にとどまるものではないだろう。それは本書を読めばわかる。しかし、ビジネス書のタイトルにするためには「社員」と訳す必要があったのだろう。そのとき「社員」という言葉を使うしかないほどに、日本語の企業環境はボキャブラリが少ないのだ。「社員」と呼ばれるとき、人は「社員」として振る舞うよりほかない。役割の名前は、社会活動における行為の枠組みである。"my people"の含むところの意味はよく考えないといけないだろう。

企業の原理的な存在理由である「利益を最大化すること」に反して、「地球環境を保全すること」を企業として実行するのは原理的に不可能だ。しかし、パタゴニアは、環境保全に資するという外部的な尺度を企業内に、かなり強引に持ち込むことによって、内部のイノベーションの原動力としているのだということがわかる。イノベーションを絶えず行うカリスマ・ビジョナリーとして、アップルのスティーブ・ジョブズと通じるところがあるのだろうと想像しつつ読んだ。創業者とはそういうものなのかもしれない。

西村 佳哲『自分の仕事をつくる』とあわせて読みたい。

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2007年08月14日 08:16に投稿されたエントリーのページです。

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