を読む。
模型作例集の体裁をとった宮本佳明モノグラムなのであろうと思って読み始めると、実は非常に実践的かつ詳細でベタな建築模型作例&テクニック集になっており、模型職人魂を激しくゆさぶられる。しかしさらに読み進めると、これは確かに宮本佳明の作品集にほかならないことが実感されるという不思議な本。
きっと、模型のための模型はここにはなく、すべてが建築にむけて組織された模型だからだろう。ただの美しい模型を作ることは経験とテクニックでできるようになるかもしれない。しかし、それを正しく建築へむかわせるためには、模型と建築を貫くような、技術に裏付けられた強いアイデア、すなわちコンセプトが必要だということがよくわかる。
家元と師範のやりとりも面白い。家元の「最初にスケールを決めるのはボスの仕事であり、それは大仕事である」という指摘は、なにげなく聞こえるかもしれないが、それを大きく間違えて(しかも一度ならず)エライ目に遭った人々にだけ深く共有しあえる警句だ。