を読む。
建築家ルイス・カーンが,1968年にライス大学建築学科で行った講義と,続く学生との討議の記録。当時のカーンは67歳。原題は"Conversations with Students"だ。訳者あとがきにいわく「ジャーナリズムや批評家たち等の一般受けをねらって語っているのでは決してなく,まさに目の前にいる学生たちに向かって語りかけ,問い掛け,答えを探し求めているのである。問いそして答え,あるいは問われ答えられる対話こそがカーンの思考の基本であった」。
一読するだけでは意味をつかみづらいかもしれない。
すでによくわかっていることを誰かに「わかりやすく」説明しようとする言葉ではないからである。
カーンは話しながら考えている。
誰かが何かを話しながら考えている,そのかたわらで耳を澄ませているような気持ちで読むと,意味がモヤモヤと形を成して立ち上がろうとする,まさにその現場に立ち会っているような臨場感を感じることできるだろう。
訳者あとがきにならって,私も原文を声を出して読んでみたいと思って,原著を注文した。
とても楽しみ。
ジョン ピーター『近代建築の証言』の付録のCDで,カーンの声を聞くことができる。録音は1961年だから『講義』の7年前でちょうど60歳。文章で読むのと印象が近い。ゆっくりとした考えながら話しかたでありながら,発した言葉には自信が満ちている。