トコロアサオさん
のハウスレクチャを聞いてきた。
トコロさんの名字は「野老」と書く珍しいものなのだけど、これは埼玉の所沢の由来にもなった芋の名前で、海老が腰が曲がっているように、野老はしわくちゃの芋なんだそうで、その葉がハート型で、それを抽象して野老さんのシグネチャーマークであるハート型を作った、というような話から始まり、江頭慎、IZA+、クルト・シュビッタース、テクノ、オプアート、P-Scope、柄紋図、倉敷でのコラージュ、塩竈菅野美術館の作品について、立体は楽で平面は嫌い、9.11のインパクトなどなど、様々なレベルにある多くのトピックが断片的に次々と語られ、それらのモザイクのようにして野老さんの仕事の総体があるということを、あらためて理解した。いずれ、野老さんがGarageBandでつくる文様の音楽、ぜひ聞いてみたい。
僕は『オフィス/アーバニズム』のときに、はじめて野老さんに会った。仕事をみた最初の印象は、幾何学的な文様やアイコンやピクトグラムをクールに仕上げたグラフィックデザインのように見えるけれど、でもちょっと「濃い」というか、ネチネチした感じもあるなあというものだった。
いまでもよく覚えているけれど、野老さんが『オフィス/アーバニズム』で使いましょうと、「トム君」と称するピクトグラムを持ってきた(モデルはトム・ヘネガンらしい)。そのファイルが、仕上がりの見ためよりずっと重い。不思議に思いながら開いてみると、これが全然単純化されたピクトグラムではなくて、関節から何から身体の構造が、びっしりとグループ化されたオブジェクトになっているのだった。抽象度を保ちつつ、豊かな表情のピクトグラムをたくさんのバリエーションでトム君たちを産出できたのはその構造のおかげだ。そのファイルを見ながら、ああ、野老さんってこういう人なんだな、と妙に腑に落ちたのだった。
野老さんの仕事は、tokolo.comで惜しげもなく公開されている。
9月9日(日)の午後に、菅野美術館で野老さんのギャラリートークがある予定。本江はファシリテータを務めるかも。詳しくは続報にて。