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2007年04月 アーカイブ

2007年04月02日

『デザイン思考の道具箱』

を読む。


奥出 直人『デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方』早川書房、2007

いまや知識はコモディティになってしまっており、企業の競争力を決めるのは「デザイン思考」による「創造性」だ、という。奥出のいう「デザイン」はもちろん商品の色や形を決めることにとどまらない広い意味だ。

本書ではIDEOやその最新作?スタンフォード大学のDスクールなどの動きを紹介しつつ、自らのデザイン・コンサルティングの経験に即して、創造的なデザイン・プロセスの実践的な方法論が語られる。前半までは気の利いたビジネス書には書いてありそうな話なのであるが、迫力があるのは後半の実践編である。

奥出の手がけたデザインの内容は守秘されていて具体例にならないのが隔靴掻痒なのだが、それでもデザインをしている現場を経てきたからこそ出てきた言葉だと思われるものが散見され、本書への共感につながってくる。p.193の掃除の話など、いささか唐突に読めるところでもあるが、「たしかに掃除は大事」と、工房を管理したことのあるものは誰もがうなずくに違いない。

奥出プロセス論のエッセンスは「創造のプロセス」と「創造のプラクティス」のp.113のダイアグラムに尽きている。

私にとってヒットしたのは、デザインプロセスの最上流において、「哲学」と「ビジョン」と「コンセプト」をクリアに分節して説明してあるところだ。これらの概念がうまく整理されずに、チームの中で渾然と使われていることが多く、それがプロセスを妨げていると感じることが多々あるので。

デザインプロセスの最上位にあるのが「哲学」。これは「社会的背景やつくり手の経験を含めた「問題意識」であ(p.87)」って、デザインプロダクトをそもそも何のためにつくるのか、なぜつくるのか、を端的に述べるものである。形は「かくありたい」という高尚な肯定文で表される。

つづく「ビジョン」は、「哲学」にそって具体的にイメージされた欲望であり、文末は必ず「〜したい」となる。マーケティングでいうところのニーズではなくウォンツが「ビジョン」である。

たとえば、iPodの哲学は「人はいろいろな音楽を自由に楽しみ人生を豊かにする権利がある」である。ビジョンは「自分のCDコレクションを持ち運べる“ウォークマン”が欲しい」である。(中略)一方、ウォークマンの哲学は「人は最上の環境で音楽を聴くことが人生の幸せである」で、ビジョンは「持ち運びができる高性能“HiFiステレオ”が欲しい」である。(前掲書、p.91)

ビジョンの発見の、次に「技術の棚卸し」と「フィールドワーク」による経験の拡大というプラクティスを経て、「コンセプト」を構築することになる。

奥出はビジョンとコンセプトを峻別することが重要だという。ビジョンは「発見」され、コンセプトは「構築」される。こういう言葉遣いが重要だ。奥出はコンセプトを次のように定義する。

コンセプトとは、ビジョンを可能にするために具体的な技術を組み入れて検討した解決策のことだ。(p.96)

アイデアをいくつか組み合わせて、具体的にどのような技術でそれが可能になるのかを検討したものを「コンセプト」と呼ぶ。(p.98)

アイデアをもとに、ビジョンを実現する具体的な方法とその構造がコンセプトなのだ。(p.99)

そして

出てきたアイデアからコンセプトをまとめる作業はリーダーがおこなう。この能力を身に付けるにはある程度の経験が必要である。アイデアのパターンを見いだしてそれを特定の技術と結びつける感覚は経験で身に付けるしかない。(p.100)

ともいう。

「コンセプト」における技術的裏付けを重視しているのは、モノをつくるためのデザインを指向しているからだ。

複数の適切な「コンセプト」が「ビジョン」によって方向づけされて、「哲学」に示された問題を鋭く照射するプロダクトがよいプロダクトである。

これを読んで、私の手元での実践として、卒業設計にとりくむ諸君のためのキックオフトレーニングの方法を考えてみた。追って書きたい。

2007年04月03日

ソーシャルアパートメント

ってのがあるんだそうで、メモ。

実質は昔からあるゲストハウスと同じ。どうやら、グローバルエージェントという会社がブランドにしようとしているもののようだ。

女性の入居者の方が多い、とGIGAZINEの記事にあるが、私は意外とは思わないけど。

追記:
Open Aの馬場正尊さんの仕事でした。知らなかった。以下の記事に詳細。
第3回 mixi(ミクシィ)を住空間化してみたら? - ECO JAPAN〈エコジャパン〉 - nikkei BPnet 環境ポータル

風呂トイレ共同=貧乏物件…という認識を変えるための新しい名付けが「ソーシャルアパートメント」。うまい名付けだと思う。

mixiになぞらえられるものにはきっと、同様の「mixi疲れ」も生じるだろう。そのケアに建築はどう機能しうるだろうか。基本的には個々人の共同生活リテラシーの問題だとしても。

関連リンク:
SNSの現実版「ソーシャルアパートメント」に泊まってみました - GIGAZINE

スラッシュドット ジャパン | SNS+アパート=ソーシャルアパートメント

[東京]読売ランド前駅のゲストハウス「ソーシャルアパートメント読売ランド」(株式会社グローバルエージェンツ) -ゲストハウス・ガイドブックひつじ不動産

Nikon | Universcale


Nikon | Universcale
:

数直線上のパワーズ・オブ・テン
シンプルなアイデア。
美しい。

via 超ミクロから超マクロまで!宇宙の神秘を感じることができる『Universcale』 | P O P * P O P

2007年04月04日

PIAGGIO MP3



【PIAGGIO】 ピアジオMP3 ★車の免許で乗れるビックスクーター★

これ、モンペリエで走ってるのを見た。
並走するクルマから見たんだけど、前輪がグニョグニョ動くのが猫系哺乳類の前脚さばきを思わせるもので、なかなか格好いいのだった。
メーカーのサイトにある動画で、豹だの虎だののイメージと重ね合わされているのを見て、そうでしょうとも、と思う。四つ足で走る時のピカチュウのようでもある。黄色もあればいいのに。

で、これが今年、日本でも発売になる。

道路運送車両法上は「側車付バイク(サイドカー)」となりますが、道路交通法上はオート3輪に準じ、運転免許は普通自動車免許で大丈夫です。つまり運転免許は4輪扱いで、車両は2輪扱いということ。ちなみに2輪で250cc以下なので車検は不要です。そして、高速道路の2人乗りは、バイク・2輪免許だと取得後3年たたないとできませんが、こちらは普通免許なのですぐにOK。

オレオレ系トライク「ピアジオMP3」 : Gizmodo Japan(ギズモード・ジャパン)

この奇形ぶりも実に好ましい。4輪扱いなので法的にはヘルメットは不要。
普通免許で乗ってると、検問で警官に説明するのは難儀しそう。輸入業者は警察官に見せるための説明書を用意しておくといいのじゃないか。

雪でも青葉山を降りられるかな?

2007年04月05日

Google Desktop for the Mac

出ました。
Google Desktop Download

さっそくインデックス作成中。
mdimport がフル稼働して、ひさびさにファンも回り出したところ。

ついでにPicasa Web Albumも使い始める。

何もかもGoogleに渡していいのか!
…という気もしないでもない。

追記:
コマンドキー連打で出るQuick Search Boxに日本語入れて変換確定するとWebブラウザが開いちゃって、肝心の検索結果が見られない。egbridgeだからか?

追追記:
Quick Search Boxがダメなのはegbridgeのせいでなく、みな同じのようだ。インクリメンタルサーチと日本語入力がバッティングしている。はやくなんとかしてほしい。

Webブラウザ上で、web検索とディスク内の検索がパチパチ切り替えられるのは新境地かも。

このところ、データが物理的にどこにあるのか、ネットかローカルかの違いを意識することが少なくなっていく経験が続いている。そのまた一歩。

2007年04月10日

建築ITコミュニケーションデザイン論 2007.4.11 休講

いきなりですが、
次週4/18より開講します。

都市デザイン論, 2006.4.12 休講

今期は五十嵐と本江で担当します。
次週、4/19より開講します。
初回で今学期中の発表担当を決めますので、履修希望者は必ず出席してください。

建築界の今と将来を考える三つの設問

というと大げさだが、カジュアルな内容のワンクリックアンケート。
座興にいかが。

【アンケート】建築界の今と将来を考える三つの設問|ケンプラッツ

絞り込まれた文言にに俳句的なアジワイのある「日本のスイッチ」や、Wiiの「みんなで投票チャンネル」みたいにキャピキャピ楽しくやるかできるといいと思うが、今の仕組みのままだと、なんとなく悲観的な回答に偏るような気がするぞ。

2007年04月11日

テレマティクス

「より便利なカーナビ」以上のポテンシャルがあるという意味で、テレコム+インフォマティックス=テレマティクス…と以前は言ってたわけだけど、いまでもそう言うのかな。この報道では「より便利なカーナビ」としか書いてないけど。

自動車メーカーのサービスは、新型カーナビを搭載した車の速度や位置の情報を、携帯電話や通信専用の車載器を通じて情報センターに集約。VICSの情報や渋滞が起きやすい場所かどうかの過去のデータも加味し、渋滞が発生しているかどうかを判断、渋滞を避ける経路をカーナビに伝える。

東京新聞:渋滞回避カーナビ トヨタも参入:経済(TOKYO Web)

トヨタはホンダやニッサンに対して後発だが、通信インフラに携帯電話だけでなく専用DCMを持っている点が違う。

一般化すると、自分の情報を提供することで、より価値の高い情報を受けとるというモデル。エンドユーザの情報を集約するという熱力学的には大変に難しいことを、インターネットで非常に低いコストでできるようになったので、こういうのがたくさん出てきた。他にはどんなのがあるでしょうか。

『ナガオカケンメイの考え』

を読む。



ナガオカ ケンメイ『ナガオカケンメイの考え』、アスペクト、2006/11/17

年寄りの成功体験談ではなく現在進行形で、自分の会社や組織やデザインの仕事や自分自身のことやなんかを、しかし我が身から引き離しつつ、一般化、方法論化しようとしていく日記形式の説教集。説教の対象は社員だったり自分だったりする。日記というものはすべからく説教であるのかもしれないけど。

ちょうど私の少し上に重なる年代記なので、切実に読めるものが少なくなかった。
一度、九品仏に行ってみよう。

2007年04月12日

UCLA

そもそもロサンゼルスに初めて来た。

成田でずいぶん待つ。待ちながら鷲田 清一の『「待つ」ということ』を読んでいた。「年を取ると記憶は一枚の画に近づく」という忘れ難い一節に出会って満足する。

機体はB777。映画は見ず、ただただ寝る。

ロスは好天。水の手に入る砂漠。

LAXからホテルまではシェアシャトルバンで$22。ちょっとぼられた気がする。宿はUCLA近くのHilgard house Hotel。予約が私でなく友人の名前になっておりチェックインで往生した。広くてよい部屋。オープンなWiFi。気楽に使うならこれで十分。ベイウィンドウにマット敷かれていて、窓辺は腰掛ける場所としてデザインされている。窓の外には教会の塔が見えている。

1時間半ほど仮眠。眠りこんでしまわないように、15分ごとに鳴るアラームをかけながら。

UCLAキャンパス内を散歩。
広い。日比谷公園の17倍だそうだ。
外に大勢いる。気持ちいい天候だもんな。

クルマは"Parking Structure"と呼ぶ立体駐車場数ヶ所に集約している。建物近くに止められるのは身障者だけ。それで、歩き回るキャンパスを実現している。歩いているから、人と話す。クルマではすれ違いざまに声をかけることはできない。バイクは多い。モーターバイクもけっこういる。学生は駐車場から校舎までスケボーやスケートで移動したりもしているようだ。

立体駐車場は、表通りから引き込んだところにあって、実は案外各建物に近い。だから、敷地のはじっこから延々歩かされるという感じにはならないようになっている。駐車場から見た建物のクラスターと、歩行者空間からみたクラスターとが、異なるグルーピングで重なり合っているわけだ。この配置は地形とも対応していて、大ざっぱに言って、尾根筋にオープンスペース、谷筋にパーキングとしていて、立体駐車場のボリュームが目立たないようになっているようだ。

建築の建物はPerloff Hall。低層の二階建て。中庭を囲むコの字型プラン。二階にぐるっとつながった大きな製図室。見慣れた風景だが、樹脂製のラピッドプロトタイピングの模型がゴロゴロしているのが東北大学と違う。中庭に面したギャラリーでの新チェアマンを紹介する展示の準備は道具が揃わないのと人手が少ないのとで難航しているようだった。がんばれ。

北の奥にあるMurphy Sculputure Garden。彫刻の庭も素晴らしい。彫刻の置き方は雑然としているようにも思えたが、電動車椅子の人や、孫連れの老夫婦などが絵に描いたように彫刻を楽しんでいる様子はよかった。

夕方になるにつれて、屋外ではスポーツやダンスの練習など課外活動の比重が高まってきていた。こういう風に、いたるところで、大学の人たちが話をしている空間をこそキャンパスと呼ぶのじゃないか。人と話をするためにわざわざ集まってきているのだから。

ロスは暖かくて雨が少ないという屋外の利用には絶好の気候だから、仙台にそのままは適用できないだろう。もっと寒い土地ではどんな工夫をしているのか見てみなければなるまい。

アメリカの大学では、建物や広場のステージや噴水など、いたるところに人名が冠されている。それを寄付した人の名前が着くのだ。寄贈者を讃えるレリーフが埋め込まれていたり、像が置かれていたりもする。日本にも安田講堂などの例があるが多くはない。税制などの違いもあるし、自分の名前の建物など気恥ずかしいという気質の問題もあろう。スポーツニュースで毎日流れるスタジアムの名前のようにはマスコミへの露出があるわけではないからネーミングライツを売るというのは無理だとしても、大学の施設整備に公共予算をつぎ込み続けることはできなくなっているから、こうした資金調達の方法はもっと研究されないといけない。

2007年04月17日

Fotowoosh

写真を3Dに見せるサービス。
空間の認知と時間の経験と記憶と。

fotowoosh - Powered by Freewebs

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2007年04月18日

踊る三角形

René Jodoin - Notes on a Triangle(1966)

山村浩二さんのブログ「知られざるアニメーション」で紹介されていた、抽象アニメーションの傑作。実に美しくかわいらしい三角形のダンス。

壁のタイルや床や天井の格子パターンを見るたびに、その対角線などを目で追いかけて、幾何学的な運動のパターンを見いだそうとせずにはいられないすべての同志におすすめ。

建築ITコミュニケーションデザイン論, 2007.4.18

はじめに
今期の日程
aitcd_2007_01.pdf

2007年04月19日

『ケンチク模型。宮本流』

を読む。

宮本佳明編著『ケンチク模型。宮本流』彰国社,2007

模型作例集の体裁をとった宮本佳明モノグラムなのであろうと思って読み始めると、実は非常に実践的かつ詳細でベタな建築模型作例&テクニック集になっており、模型職人魂を激しくゆさぶられる。しかしさらに読み進めると、これは確かに宮本佳明の作品集にほかならないことが実感されるという不思議な本。

きっと、模型のための模型はここにはなく、すべてが建築にむけて組織された模型だからだろう。ただの美しい模型を作ることは経験とテクニックでできるようになるかもしれない。しかし、それを正しく建築へむかわせるためには、模型と建築を貫くような、技術に裏付けられた強いアイデア、すなわちコンセプトが必要だということがよくわかる。

家元と師範のやりとりも面白い。家元の「最初にスケールを決めるのはボスの仕事であり、それは大仕事である」という指摘は、なにげなく聞こえるかもしれないが、それを大きく間違えて(しかも一度ならず)エライ目に遭った人々にだけ深く共有しあえる警句だ。

ハウスレクチャ 中村拓志

4/27金19時〜@阿部仁史アトリエ
ゲスト:建築家 中村拓志さん
1000円
申し込み:メールで houselecture@a-slash.jp まで

フライヤーのPDFはこちら↓
ダウンロード

4/29には、TBS系情熱大陸にもご出演の予定とか。

都市デザイン論, 2007.4.19

出題と発表グループの編成

ハンドアウトは下記よりダウンロードできます。
ダウンロード

次回は5月17日、「ユートピアの都市」です。

2007年04月23日

『おじいちゃんの封筒』


藤井 咲子『おじいちゃんの封筒―紙の仕事』ラトルズ、2007

大工を引退したおじいちゃんが、ありあわせの紙を接ぎ合わせて、しかし律義に丹念に、15年にわたってつくり続けた「封筒」の写真集。その作業を「紙の仕事」と呼んでいたという。

著者は封筒製作者の孫なので、書名が「おじいちゃん」の封筒なのだけれど、私は父を思わずにはいられなかった。そして、私自身がこんな風に「封筒」を作る姿も親しく想像しもした。

手紙を書き続けるのではなく、封筒を作り続けること。

私には隠居の才能があると自負しているのだが、まだその時期にあらずと無理に自分を鼓舞して仕事をしているようなところがある。こういうものにグッと来るってのは、ちょっと疲れているのかもしれぬ。

2007年04月25日

建築ITコミュニケーションデザイン論、2007.4.25

データの表象
aitcd_2007_02.pdf

2007年04月28日

建築デザイン論, 2007.4.27

五十嵐さんと交互にふたりで担当する2年生むけの授業。
本江担当分の初回。

入口について
ad2007_入口.pdf

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