「オフィスからワークプレイスへ」
と題する小文を,建築学会の建築雑誌に寄稿しました。
連載「ゆく言葉/くる言葉」の第14回にあたります。
連載の企画にそっているので,「オフィス」が「ゆく言葉」で「ワークプレイス」が「くる言葉」になっていますが,もちろん,これらは置き換わる言葉というのではありません。
一般的に,人々が新しい言葉を使うようになるは,その事柄が意味の塊として世界から弁別されるようになるからです。
産業革命期に「ミル」が大規模で複雑な「ファクトリー」に変化するなかで,同時に強化された事務管理部門が独立して「オフィス」と呼ばれる空間が生まれました。
そして今日,「オフィス」という多面的な活動から,とりわけその場所の問題として「ワークプレイス」が切り分けられてきたのです。
ワークプレイスという言葉は,オフィスが単なる機能的な「空間」にとどまらず,そこに働く人々のための,意味に満ちた「場所」であることをあらためて意識させるものだといえそうです。
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本江正茂「オフィスからワークプレイスへ」『建築雑誌』2007年2月号,p.30,日本建築学会, 2007