土木デザインのアイデアコンペ,「景観開花。」の審査会に審査員として参加。篠原修委員長のほか,デザイナーの伊藤登さん,小野寺康さんが審査員。
テーマは「川」。
最終選考に残った5組のプレゼンテーションを聞く。
いずれも建築系か土木系の学生。5分間の限られた時間であったが,画面の作り込みと発表の組立は非常にクリアで感心した。質疑応答は場数の問題なので,質問の形をした審査員のトスを,正しくスパイクできるようになるためには,今後一層の修練が必要だろう。
優勝したのは京都工芸繊維大の森岡俊介さん。京都に秀吉がつくった土盛りによる都市城壁「御土居(おどい)」と隣接する紙屋川とを結ぶ温泉場の計画。歴史的問題から社会的問題までバランスよく視野を広げ,様々なスケールで密度高くつくられた作品。
次席は早稲田の坂井遼さんほか。洪水をたびたび引き起こす東京中野の妙正寺川。その旧水路が現在は宅地となっているのを,保水・透水機能をもった横丁とし,近隣のためのコミュニティスペースとする計画。ひとつひとつは弱いミクロな技術を,しかし分散的にあちこちに配置することで全体の問題解決にあたろうという現代的なテクニカルアプローチ。細部の作り込みに難があり,一等は逃したものの,たとえばすぐれた造形デザイナーと協働することで,化ける提案になりうるのではないかと思われた。
その他,両国国技館の前に船着き場をつくる案,バンコクの河岸に浸水許容領域をとった水上住宅地の計画,鴨川に人が乗れる行灯をうかべる案など。
佳作の鴨川の計画は仙台の学生によるものだったのだが,京都の森岡さんは,これは他所者ならでは提案だという。京都にいたら,鴨川の川床のところにこんな提案をしたら,たとえコンペでも「おまえは鴨川がわかってない」とかいってあちこちからボコボコにされますよ!というのである。京都のなかには,京都的でない=現状はよくない=手を付けていい部分と,京都的で良いもので,ゆえに手を付けてはいけない部分が,はっきりあるのだそうだ。
続いて,広瀬川や都市の未来の水辺を考えるシンポジウム。
広瀬川は段丘によって市街地と落差が大きいがゆえに,手付かずに保たれてきた。川越しの町並みが絵はがきになるような都市景観の名所は広瀬川にはないのだが,このワイルドな河原が市街地に隣接していて,いきなり別天地になっているという関係性のありかたにおいて広瀬川の景観はユニークである。など。