を新幹線でさくっと読む。
平野 啓一郎『本の読み方 スロー・リーディングの実践』PHP新書,No.415,2006
アンチ速読本。
本はいろいろ考えながらゆっくりじっくり読むとためになるよ,と。
ま,そりゃそうだ。
p.40あたりでフォトリーディングも批判されているが,写真のように見ていって,それで内容が理解できている,という要約になっているけど,これはさすがに舌足らずでずるいだろう。『考具』にも書かれていたけど,フォトリーディングは本を何度も読むことになるのが味噌なのにな。
たしかに,まずい速読が「作者の言わんとするところを理解するのではなく,単に自分自身の心の中をそこに映し出しているに過ぎ」ず,「多く本を読めば読むほど,自分の偏ったものの見方が反復され,視野が広がるどころか,ますます狭い考えへと偏っていく」傾向をもっているのは確かだろう。(p.42)
しかし,経験からいえば,なじみの字面よりも,むしろ見慣れない違和感のある言葉の方に,強く印象が向かうものだ。違和感に注意せよ,とは平野も主張していることだ。
ただし,違和感に注目できるのは,集中できてうまくやれている時だけだ。疲れていて気が散っていたりすると,平野のいうように,触りのいい馴染みの字面ばかりを拾っているな,と感じる時がある。これはもう失敗。こう感じるようなら,その時は速読はもう無理だから普通に読むしかない。
鴎外やカフカを例にして,丁寧に読んでいく実践編は,小説をじっくり引きつけて読むことの入門として,面白く読んだ。
だから,何も速読を仮想敵にしなくてもいいのになあと思う。早く読んだり,ゆっくり読んだりすればいいじゃん。スローフードの考え方には共感できるのに,おまえの食ってるのはジャンクだって言われるとカチンと来る。それと似た感じがした。