を読む。
カズオ イシグロ『わたしを離さないで』土屋政雄訳、早川書房、2006
日本生まれの英国人作家カズオ・イシグロの新作。『日の名残り』なんかが有名か。
謎めいた全寮制の施設で生まれ育つ若者たち。彼らには「提供者」となる使命がある。
丁寧なエピソードの積み重ねの中に、彼らの異様な運命が立ち現れてくる痛切な物語。
ネタバレしないでおもしろさを紹介するのは無理な気がする。
もちろん、ネタは読み始めれば薄々わかってくる。主人公たちも、知っているのに知らないふりをしている。公然の秘密が読者と主人公たちとで共有されている。その「薄々」の積み重ねかたが絶妙に素晴らしい、凄みのある小説。ぜひ読まれたし。
下記に作家のインタビューがあるが、ネタバレを含むので、本編を読んでから読むべし。
「人の一生は私たちが思っているよりずっと短く、限られた短い時間の中で愛や友情について学ばなければならない。いつ終わるかも知れない時間の中でいかに経験するか。このテーマは、私の小説の根幹に一貫して流れています」
もひとつインタビュー
カズオ・イシグロ インタビュー by 大野和基
こういう凄い小説=テキストの構築物を目の当たりにすると,作家はどんな手順で,どんなツールをつかって,構成を考えるかを知りたいと思う。やっぱりダイアグラムを描くのだろうか? 断片的なメモはどう管理しているのだろう。コンピュータを使っているんだろうけれども,たとえば執筆の途中で,どんなファイルが作られるのだろうか……などなど。