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『情報学的転回』

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西垣 通,『情報学的転回―IT社会のゆくえ』春秋社,2005

西垣通の語りおろし。以前からよく書いていた「聖性」などの宗教的な話題,とりわけユダヤ=キリスト教批判,同根からのアメリカ=日本文明批判,『基礎情報学』でまとめたオートポイエーシスに基づく生命情報理論,ヨーガの話等々がないまぜになってグリグリ進む。従来からの西垣の読者にはスムースに読めるけれども,そうでない人には話についていけないという感じがするよ。

タイトルの「情報学的転回 informatic turn」は,もちろん「言語学的転回 linguistic turn」を受けてのもの。

言葉を発する人間の内面よりも外面に表れた言葉そのものに注目せよという言語学的転回は,白人中心の近代進歩主義を徹底的に批判し,有色人種もふくめて人間はみんな平等だという理念を広げた。

だが,この文化相対主義はニヒリズムにもつながるものでもあった。西垣によれば,言語学的転回は,人間しか眼中にない点に限界がある。人間と他の生物の間に本質的な差異はない。動物もコミュニケーションをしている。まず「言語ありき」では十分ではない。

つまり情報学的転回とは,「人間は生物なのだというところから出発して,われわれが生きている生命環境を尊重しようというテーゼに基づいて,もう一遍根底から物事を考え直してみようということです。(p.121)」

言語学的転回が,主体から言語へ,歴史から構造へ,実体から関係へ…という図式で語られるのにならえば,西垣のいう情報学的転回は「機械から生命へ」といえるだろう。(同じスローガンを使っている建築家もいますね。)

そういう大きな枠組みでもって,ニートだとか自殺三万人だとかな現代日本を語ろうとするから,なんだか間尺が合わない感じがしてしまうのかもしれない。

だから本書だけ読んでもダメです。

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2006年02月26日 20:31に投稿されたエントリーのページです。

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