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2006年07月 アーカイブ

2006年07月01日

『大学のエスノグラフィティ』

を読む。


船曳 建夫『大学のエスノグラフィティ』有斐閣,2005

東大駒場の文化人類学の教授による大学の内幕話。エスノグラフィならぬエスノグラフィティと名乗っているだけあって,それを言っちゃ身も蓋もないだろうよと思うような話も少なくないが,でも建前以上のことを言おうとすればこうなるしかないんだろうなと思われた。私は工学部出身だが実験系ではなかったから,文系の教養学部のケースであっても共感できることの方が多かった。

ゼミの発表で論文を朗読させるというのは新鮮だった。

発表と言えばインタラクティブなものであって,原稿の棒読みはよろしくないという先入観があったので驚いたのだが,言われてみれば,英米系の研究者には原稿を(ただし棒読みではなく朗々と)朗読するタイプの発表者が少なからずいるのを思い出した。朗読形式による発表は,「口頭の発表であっても書き言葉が持つ確定性といったものを引き受け,あれやこれや言い変えたり(ママ),語尾を濁らせてぼかしたり,といったことによるあいまいさを避ける」ためだというのだ。

この方法は,とりわけ博士論文執筆中の学生だけを集めた"Writing -up Seminar"で有効だそうだ。これは書いてきた博士論文の一章を一時間かけて読み,聞いた院生たちがコメントするという「閉鎖的」なゼミで,文章朗読形式による発表には「考えていることを文章のかたちではっきりさせる」という利点があるという。「こういうことを書こうと思っている,と博士論文の偉大な構想ばかり述べ立てて,なかなか書かない,という学生」の「病弊を断つ」というのだ。まさしく私はこういう「尿道性格」の学生であったから,こうした方法もありえたのかと感心した次第である。

著者が博士論文の執筆に行き詰まって暗い気分で歩いているとき,通りがかった友人が「書くことだけがお前を助ける」とだけいって去っていったというエピソードが語られる。

「書くことだけがお前を助ける」

論文と課題に取り組むすべての学生に聞かせたい。


「没場所性の物質的豊かさと場所の最良の質とをつなぎあわせる 情報技術の使い方はあるだろうか?」

という論文(中西泰人さんと共著)を,NTTドコモの季刊誌『Mobile Society Review 未来心理』第6号に寄稿しました。『10+1』#42で書いた「没場所性に抗して」から,中西さんとWiki上で共同執筆して展開させたものです。

掲載誌は研究室にあります。


2006年07月02日

Super Normal

Supernormal

AIXSでの,ジャスパー・モリソンと深澤直人が選んだ「スーパーノーマル」なプロダクトの展覧会。最終日とあって混雑していた。

なにしろ,なじみの品物ばかり。

外国にいくと,こういうあたりまえのはずのものが見慣れないものであることが嬉しいのだけれど,こうやって改めてきれいに展示されていると微妙な異化作用が生じる……はずなんだと思うけれども,今風の雑貨セレクトショップのようにしか見えないところもあるな。

Living Motifはエレベータが新設され地下に書籍売り場が拡充されていた。散財。

2006年07月03日

FM1, 2006.7.3

最終回。
サステナビリティ
期末レポートのしめきりは7月31日(月)17時です。4階受付に提出のこと。
Fm1 2006 11

2006年07月05日

現代の空襲警報

国民保護のための情報伝達の手段 - 内閣官房 国民保護ポータルサイトで,「現代の空襲警報」が試聴できる。

国民保護に係る警報のサイレン音 警報が市町村から住民に伝達される際には、武力攻撃が迫り、又は現に武力攻撃が発生したと認められる地域に当該市町村が含まれる場合には、原則としてサイレンを使用して注意喚起が図られることとなっています。政府は、平成17年7月、国民保護に係る警報のサイレン音を決定しました。

……微妙な音だなあ。どういう検討を経てこの音になったのか知りたい。

それにしても arekore とは間抜けなディレクトリだことよ。

via -edなこと

元町公園が消える?

東京お茶の水からノーマン・フォスターのセンチュリータワーの前を通って水道橋へ下る道の途中,JR中央線から神田川越しに見える元町公園。これをつぶして体育館を建てる計画があるという。

元町公園(昭和5年開設)は、関東大震災復興事業の一環として、東京市(当時)が設置した52か所の小公園のひとつです。防災と罹災者救護に大きな可能性を示した公園の数を増やし、同時に、近所の子供たちが遊び・学ぶ場所として公園を小学校に隣接させる新しいアイディアを実現させたものです。しかし都心の再開発がすすむ中で、この特別な空間を体験できる場所は、元町公園(と旧元町小学校)ただ一つだけとなってしまいました。本郷台地から神田川へと下る崖線の地形を巧みに活かし見事にデザインされた緑の空間は、カスケードやテラス状の広場、パーゴラなど大正・昭和初期モダニズムの造形美にあふれています。

学生のとき,都市計画の授業でこの公園の存在を知り,その足で見学に出かけたのを覚えている。実に建築的で味わい深い公園である。元町公園には歴史的な価値があり,簡単につぶしていい空間であろうはずがない。open space は empty space ではないのだ。


2006年07月07日

犯罪発生と子供避難所マップ

犯罪発生と子供避難所マップ/--大阪府版--/

大阪府警が発行している犯罪発生情報メールサービス「安まちメール」の内容を,GoogleMapsにプロットしたGIS。

宮城県警も昨年度から犯罪発生マップを公開しているが,ベースがスタティックな地図なので,見方が一様になりがちだ。オンラインの地図もズームやスクロールが当然になってきているので,このグリッド分割&矢印で隣のセル…のインタフェイスはなんとも古くさく感じる。アイコンも緊迫感なさすぎ。

via [N] 犯罪発生と子供避難所マップ(大阪)

2006年07月09日

Opal

アウトラインプロセッサ,Actaが帰ってきた。

Opal, the easiest outline processor

初期設定で「Return key starts new paragraph」を選ぶ。
妹をつくるときは enter で。

追記:
ひとしきり使ってActaの懐かしいキーボードショートカットなんかも指先に思い出されてきたので,よしちょっとこれでメモを作ってみるかと仕事にとりかかったところ,フォントを変えていたら落ちてしまった。version 1.0d12。public betaだから文句は言えないが。

アイデアの生成に立ち会うためのアウトラインプロセッサは,とりわけ安定したソフトウェアでなければならない。

アウトラインプロセッサが作業中に落ちてウィンドウが消え去る瞬間,脳裏に浮かびつつあったはずのあえかなアイデアが,ふっつりと消え去っていくのをまざまざと体験させられた。

去っていくアイデアの後ろ姿は見えているのに,もはやその顔は思い出すことができなくなっている。

弱点を逆手にとって逆転する見事な解決方法だった気がするんだがなあ……

2006年07月12日

建築ITコミュニケーションデザイン論, 2006.7.12

情報化社会という神話
Aitcd 2006 09

来週は最終回。期末レポートの課題を説明します。

2006年07月13日

Wii 予約お知らせ開始

予約がはじまったらメールでお知らせ。まだ値段もわからないのだが。

Wii (仮称)

2006年07月16日

地図と道標

地図と道標が一枚の画面に共存しているサインをデザインしている。
たいへんに難しい。

おなじ道案内であっても,地図と道標とでは表象の形式が全く異なっているってことをあらためて思い知る。

2006年07月17日

説明と理解

「私たちは説明することに夢中になって,理解することをないがしろにしてはいないだろうか。」

デザイナー,ステファン・ドイル

道添進『ブランド・デザイン―アメリカ・トップデザインオフィスによるデザイン戦略の手法』美術出版社,2005,p.168

MT4i v2.1

出てました。
主にセキュリティ対策。さっそくインストールしてテスト中。

2006年07月19日

ケータイ > PC

♪ 小さな窓から見える この世界が僕のすべて

携帯端末からのネット利用者、初めてPCを上回る - nikkeibp.jp - 注目のニュース:
2005年末時点におけるモバイル端末によるインターネット・ユーザーは、前年から18.8%増の6923万人となり、パソコンによるインターネット・ユーザーの6601万人を上回った。またモバイル端末だけを利用するユーザーは1921万人と、インターネット・ユーザー全体の22.5%に達し、パソコンだけを利用するユーザー1585万人を追い抜いた。

「インターネットを使う」ってなんのことなんだろな。

建築ITコミュニケーションデザイン論,2006.7.19

最終回。環境情報デザイン論
期末レポート課題:Aitcd 2006 Report

2006年07月21日

『イノベーションの達人!』

を読む。


トム ケリー, ジョナサン リットマン『イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材』鈴木主税訳,早川書房

IDEOの新しい本の翻訳。『発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』の続編。

イノベーションに必要な人材を10人のキャラクターとして提示している。

  1. 人類学者
  2. 実験者
  3. 花粉の運び手
  4. ハードル選手
  5. コラボレーター
  6. 監督
  7. 経験デザイナー
  8. 舞台装置家
  9. 介護人
  10. 語り部

いずれも言い得て妙なネーミング。前著と同様にたくさんの事例,それも自社での身近な経験が紹介されるので,あれこれ感心しつつ読み進めた。

こうした役割はサッカーのポジションのようなものであって,人によって向き不向きこそあれ,固定的なものではない。語り部が介護人になり,時に経験デザイナーとして振る舞うこともある。

「最高の環境を整える人」が「舞台装置家」とされ,「建築家」ではないことが興味深いな。

ダイナミックなチームでのプレイにおいては,チームメンバーの潜在的な能力への期待と寛容の精神が肝要なのだと思われた。忍耐強く寛容でありつつも安きに流れず,卓越を求め続けることは並大抵のことではない。

私は失敗したことがない。一万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ。 −−トーマス・エジソン

2006年07月26日

Skype for Mac ビデオプレビュー

Skype for Macビデオプレビュー版がやっと出た。ベータゆえ慎重に。

今のところ問題なく使えている。顔が見えた方がいいね的用途なら問題なさそう。
画質はiChatAVのほうがいいな。

2006年07月29日

ソニー新本社完成間近

【やじうまPC Watch】ソニー新本社、まもなく完成か?

この記事に写真も多く出ております。プランが見たいなあ。

2006年07月30日

『フェルマーの最終定理』

を読む。



サイモン・シン『フェルマーの最終定理』青木薫訳,新潮文庫,2006

すばらしくよくできたサイエンス・ノンフィクション。
ワイルズの証明を軸にした,数学の美しさとその完全性に魅惑された数学者たちの列伝。


x^n+y^n=z^n
この方程式はnが2より大きい場合には整数解を持たない。

この極端にシンプルな問題がフェルマーの最終定理。こんな単純な問題が,300年間誰にも解かれぬままに残っており,しかも重要な問題でありつづけたことが数学の凄さである。

1993年,アンドリュー・ワイルズが20世紀の数学テクニックを駆使してこれを証明した。ワイルズのアプローチは,直接フェルマーの定理を証明するのではなくて,すべての楕円方程式はモデュラー形式であるという谷山=志村予測を証明することによって,背理法的にフェルマーの最終定理を証明するというもので,コリヴァギン=フラッハ法と岩澤理論を組み合わせて使うのがミソである。

私にはまったくその意味がわからないが(笑),わからないままでも,そのスリルと悩ましさと発見の興奮は十分に理解でき,手に汗握る思いで一気に読み進めた。難しい話を,その難しさを矮小化することなく,しかし平易に説明する筆者のサイエンスライターとしての力量には感心させられた。翻訳もよい。夏休みにふさわしい感動的な秀作。中学生の時に読んでいたら人生が違ったかもしれない。もっとも自分が数学にむかないことは今では思い知っているから,読まなくてよかったのかもしれないが。

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