と題する映像のインスタレーションを,せんだいメディアテークの1階オープンスクエアで見てきた。つくったのはwowlab。
Motion Texture
メディアテークの映像企画「イメージの庭vol.3 サッカディック・サプレッション」の一連の企画のうちのひとつである。
間仕切りを出して暗転した20m角くらいの会場。暗転してあるものの,二本のsmtのチューブは光を通して屹立している。
4m×3mほどの大きさのスクリーンが3面,床にバラして並べてある。スクリーンと床との間には段差はなく,観客はスクリーンの上にそのまま踏み乗ることができる。それぞれのスクリーンの角には白木のイスが二脚,対角線の位置に中を向いて置かれていて,これにも腰掛けることができる。会場全体に静かに環境音楽が流れている。道具立てはこれだけだ。
そのスクリーンに天井からプロジェクタで映像が投影されている。青空や,ビルの外壁,飛行機の窓からみた下界の景色,幾何学的パターンなどが,必ずしも鮮明でない様子で映し出される。三枚のスクリーンは連動して一枚につながった画像をなすこともあれば,バラバラの画像の場合もある。
その背景の上に,動くものが登場する。魚や飛行機,シダ状の植物の枝,円や矩形,王冠のようなもの?などが,ひとつないし複数,画面の上を移動していく。これらも三枚のスクリーンにまたがって移動したり,画面の内側にとどまったりしている。
そのスクリーンの上を,観客が歩き回る。その影がコントラスト強く,床に映し出されている。
ここからは,映像を見ての私の推測になるが,この動いているスクリーンそれぞれを,天井においたカメラで撮影しているのであろう。そして,撮影されている画面(コンピュータの動画+観客)から,動くエッジをリアルタイムで検出し,ほんの少しの時間差をおいて(これが意図的なズレなのか,計算能力の限界による結果的なズレなのかはわからない)そのエッジを水滴状にぼかすエフェクトをかけている。そのエフェクトを加えた映像が,天井のプロジェクタから投影されている。
だから,画面を動くものがあると,水ににじむような跡が映る。魚も飛行機もシダの枝も,動いている先端部分はその形がはっきりしているけれど,後半分ぐらいは水滴のように滲んで波打つ。スクリーン状の観客も,じっとしていると何もおきないが,ゆっくり動くと,その影の跡が水に滲んで波打っていく。
映像は,動くそばから自身へのフィードバックによって,水に溶けていくように崩れていく。さらにその波紋がまた動くエッジとして検出され,水滴のエフェクトをうけて崩れていく。スクリーンの物理的なエッジもまた,画面の動きとともにエフェクトをうけて,新たな波紋をつくりだす。
二枚のスラブの間に,光のエコーが響きあっている。
観客はその間に立っている。
スクリーンのうえで,ゆっくりと動くと,自分の影の形の波紋が生まれる。早く動きすぎると波紋は大きくならない。ゆっくりすぎてもダメである。ちょうどいい遅さで,ゆっくりと動くと,大きな波紋が生まれる。お風呂のお湯をかき混ぜるように,その水の量にふさわしい動きを発見していく。
泳いでくる魚に手をかざすと,魚は水に溶けてしまう。しかしすぐにすり抜けて,少し先で浮かび上がってくる。
自分の意思どおりにグイグイ映像を動かすのも「インタラクティブ」なんだけれども,こんなふうに環境のもとめるリズムに自分の動きを沿わせていくように,探るように動いてみるインタラクションもおもしろい。
私が入っていったとき,他の観客は皆,最初はイスに腰掛けて,じっくり鑑賞していたのだ。でも私がギクシャクとスクリーンの上で踊って?いるのを見て,他の観客もスクリーンにのって魚を追い始めた。もう少しインタラクションを誘ってもいいのにな。ところで,スクリーンに乗るのに靴を脱いだ人がいたのが,ちょっと面白かった。