西林 克彦,『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』光文社新書, No.222, 2005
わからないかぎりは読みを深める努力がなされるが,中途半端に「わかったつもり」になってしまうことが,よりよい読みを阻害するという話。豊富な事例や練習問題によって,なるほど私は「わかったつもり」になってましたと反省することしきりだった。
本書は読みを深めることをねらって書かれているのだが,これは「言ったつもり」「書いたつもり」になってしまうことに対する警句として読むことができるだろう。筆者の述べる「いろいろ」や「善きもの」,「無難」などの「わかったつもり」を作り出す「魔物」の類型は,そのまま自ら行う発言や作文にもあてはまる。
「わかったつもり」になってしまう最初の読者は常に書き手自身なのだから。