を読む。
ドナルド ショーン,『専門家の知恵―反省的実践家は行為しながら考える』佐藤学,秋田喜代美訳,ゆみる出版,2001
邦題が内容とフィットしていないので損をしていると思う。これは「専門家」のありかたをラジカルに再検討している本だ。
Donald Schön, The Reflective Practitioner: How Professional Think in Action, Basic Books, 1983 の「第二章 技術的合理性から行為の中の省察へ」と「結論 専門職とその社会的地位への示唆」の三分の二を翻訳したものである。原著は様々な事例研究を含む膨大なもののようだが,その中核部分だけを抜き出して訳出したものが本書だ。
なので,議論はいきなり非常に抽象度の高い水準ですすんでいく。それが読みにくい印象を与えることは否めない。が,訳者らによる「序文」と「解説」が,端的に議論の構図を整理しており,まずはここを読んでおくのがよい。
きちんと整理して紹介したいところがだ,とりあえず,裏表紙の紹介文を抜き書きしてお茶を濁す。
専門家の資質や能力を疑う事件が続出している。専門家と社会との関係が厳しく問われ,その知識と技術と見識の相対にわたるパラダイムの転換がもとめられている。ショーンは本書で,「技術的合理性 technical rationality」に基づく「技術的熟達者 technical expert」から「行為の中の省察 reflection in action」を中心概念とする「反省的実践家 reflective practitioner」という新しい専門家像への転換と,その実践的思考のスタイルを鮮やかに描き出している。それは専門家教育のカリキュラム改革や専門値の構造の変革を迫るとともに,基礎科学や応用技術の「厳密性」において劣るために「マイナーな専門職」とされてきた教師や看護婦や福祉士などの実践を活気づける起爆剤となった。
本書で提示される「反省的実践家」および「行為の中の反省」の概念,そして『枠組みの省察』においてさらにショーンが展開させた「デザイン合理性 design rationality」と「枠組みの省察 frame reflection」の概念は,デザイン行為を理解するうえで非常に重要な概念だ。きっちりまとめて,なんかの講義で話すつもり。