を読む。
セシル・バルモンド,『インフォーマル』金田充弘監修, 山形浩生訳, TOTO出版, 2005
コールハースのボルドーのヴィラ,クンストハル,コングレキスポ
クルカ&ケーニッヒのケムニッツ
リベスキンのスパイラル
シザのエキスポ98ポルトガル館
ファン・ベルケルのアンヘルム中央駅
本書にとりあげられた上記作品の他にも
スターリングのシュトゥットガルト美術館
コールハースのシアトル図書館
リベスキンのユダヤ博物館
などなど
これらの構造デザインを行ったのが,構造家のセシル・バルモンドだ。
彼は,建築家との対話を通じ,きわめて合理的論理的なプロセスをへて,結果,グラグラしたインフォーマルなものをつくりだす。これらの作品が,なにほどか現代的で新鮮な形態に到達・提示し得たのは,建築家のビジョンもさることながら,セシル・バルモンドの卓抜な構想力の力によるものが大きいということがよくわかる。
こうしたインフォーマルな構造に対しては,構造と力の関係が直観的でなく捉えにくい,結果を見ても成立するのかどうか理解できず,コンピュータの計算結果を鵜呑みにするしかなくなる,などという批判がある。だが,本書を読めば,直観そのものにも「貧富の差」があることは明らかだ。合理的であることと複雑であることとは矛盾しないのである。
本書はこれらの建築の構造決定プロセスのケーススタディと,「インフォーマル」な構造に関する数学を話題にしたエッセーからなる。文中にちりばめられた小さなダイアグラム・スケッチが,いちいち的確であることにあらためて驚く。数学的な知識も前提とはされていない(もちろんそれがあればもっと楽しめるのだろうけれど)。