をパラパラと眺め,ところどころ読む。
Michael Sheridan, Arne Jacobsen,『Room 606: The Sas House and the Work of Arne Jacobsen』,PHAIDON, New York, 2003
アルネ・ヤコブセンの作品集。タイトルにあるように,代表作「SASハウス」の,さらにオリジナルの状態のまま保存利用されている「606号室」にとくに焦点をあてている。
ヤコブセンは家具デザイナーとして知られているが,建築に関わるものをなんでもデザインしていた。SASハウスはその集大成ともいえるものだった。本書で紹介されているとおり,SASハウスにおいては,ボリュームスタディから,プランニング,カーテンウォール,室内の造作,照明,テキスタイル,もちろん家具,その他にもカトラリーから食器にいたるまで,終止一貫したテイストを貫きながら,文字通り隅々までデザインしている。
竣工当時の写真,図面,スケッチなどを集成した充実した作品集。フリーハンドの展開図のスタディ図面などは汲めど尽きぬ味がある。きわめてオーソドックスながら端正な造本も美しい。
専門の高度化が細分化を招き,ひとりひとりのデザイナーが手を出せる範囲が狭められている今日においては,このような仕事はほとんど不可能なように思え,縁遠く感じられるかもしれない。しかし,今日がコラボレーションの時代であるからこそ逆に,こうした徹頭徹尾一人称が貫かれた仕事をひとつの参照点として理解しておくことには意味があるのではないか。建物の設計にとどまらず,いろんなものをデザインしてみたいと思うのなら,自分の仕事へのスタンスとヤコブセンのそれとの距離を測ってみておくことには,たくさんの発見があるだろう。
ところでこの本,私は青山のワタリで購入した。ひやかし気分であれこれ物色していたら,若い店員さんに,「これすばらしい本ですよ」と突然薦められたのである。そんなことは普通ないので面食らったが,見ればなるほどよくできた本であるし,そのような推薦をする店員を応援したいと思ってその場で買ったのであった。正直,アマゾンで買う方が安いんだが,そういう本屋と店員が街に残っているほうがいい。
この記事のアマゾンへのリンクを殺しておく所以である。
コメント (1)
ワタリウムのブックショップならあり得る話です。
投稿者: もとなが | 2005年06月20日 20:16
日時: 2005年06月20日 20:16