を読む。
野矢茂樹 文,植田真 絵,『はじめて考えるときのように—「わかる」ための哲学的道案内 』PHP文庫,2004
『論理トレーニング 』の野矢茂樹の本。哲学入門である。哲学史入門ではない。
考えるってどういうことかを考える。
「8年間ずっと」フェルマーの予想について「考えて」いた数学者がいる。恋人のことをいつも「考えて」いる人がいる。「ずっと」考え続けているというとき,「考える」ってのは何をすることなのか。
「考える」というのは「スキップする」というような特定の行為の型とは違う,と野矢は言う。だから,考えているときは,何をしていてもいい。何もしてなくてもいい。ただ「問題をかかえ,ヘウレーカ(ユリイカ)の声に耳を澄ますこと,研ぎ済ますこと」が考えることなのだ。
p.121に面白い絵がある。なんでもないガランとした部屋の絵。
この絵のタイトルは「この部屋にはパンダがいない」だという。たしかにパンダはいない(笑)
ないものがある,と我々はいう。何の関心もなく世界をみわたせば,そこにはただあるものだけがある。「パンダがいない」ということができるのは,パンダがいる可能性をつかんでいる者だけだ。「否定というのは,可能性と現実のギャップに生じる。」そして,「現実ベッタリで可能性の世界がないならば,考えるということもない。」(p,150)
プーにイーヨーがいう。
考えるってのは,「つめこんで,ゆさぶって,空っぽにする」ことだ。