« 『音楽未来形』 | メイン | Googlezon »

自力で書籍をリッピング

音楽はこの数年で一気にデジタルデータとして流通され利用されるようになったが,映像や書籍は「パッケージソフト」のままであり,デジタルマーケットは一向に立ち上がってこない。特に書籍はダメだ。なぜか。

デジモノに埋もれる日々: 音楽と書籍にみるデジタル化スキームの違いと、ビジネス離陸との関係:
書籍と映像が音楽のあとに続かないのは、この「コンテンツのリッピング事情」に大きな差があるからだと考えられます。映像はまだライブラリ構築に必要なストレージ容量が十分ではないという理由もありますから言い訳がききますが、書籍のほうはそうもいきません。現在のPCやビューワが持つ性能は、書籍のデジタルライブラリを作って楽しむためには既に十分すぎる能力を持っています。その環境を活かすことができないのは、ユーザが自分自身のコレクションをデジタルデータ化するための術、つまり スキャンデバイス が存在しないからです。音楽が業界の想像を遥かに超えるスピードでデジタル化していったのは、スキャンデバイスが完備され、ユーザが自力でリッピングをしたからなのです。

「記憶する住宅」の美崎薫さんはこれを力業でやってきているのだった。

使いやすい書籍のスキャンデバイスがあるといいのだ。ユーザーは自分でドシドシとリッピングをするであろう。そうなればデジタルデータとして書籍を利用することへの抵抗もドンドン薄らいでいくにちがいない。

私はコミック買いまくり癖があり、所持するコミックはおそらく2,000冊を超えます。 これらが1つのデバイスでパラパラパラパラとスキャンできるのであれば、私はそのスキャンデバイスとスキャン後の作品を読むための見開きビューワを各々5万円でも購入 するでしょう。自分の全ライブラリをデジタル化できるということは、それくらいの価値が十分にあります。

オレはもっと出すぞ。そのスキャナ,50万円くらいなら買う。

コメント (12)

新條:

米国のコミックのコレクターの間では相当むかしからスキャンして保存、交換が盛んです。主立ったシリーズが数十年続いていて巨大なコレクター市場があること、また所蔵していてもアメコミの体裁ではすぐに状態が悪くなってしまうのでコレクションを痛めずに読み返せるのがよいらしいです(新刊をタダで読みたい、という通常の海賊版的な目的よりも)。

日本の2ちゃんねるなどのコミュニティでも「自炊」と称して最適なスキャナ選び・きれいな解体の仕方・フォーマットや画像補正のコツからメタデータ(ファイル名に作者名とか)のガイドラインまでノウハウの蓄積がされているようですね。

小説とか普通の書籍でも、英語などOCRが簡単な言語ではニュースグループやIRC上にコミュニティがあって、新刊から古典まである程度の需要がある本は流れ作業的に役割分担して(プルーフリーダとか)かなりの割合が流通してます。

最近は紙の本を買っても検索できないことに違和感を覚えます。

gachapin:

新條さんのコメントに補足:
 
新條さんのコメントに「自炊」という用語が出てきましたが、
同人誌用語では「本を解体しスキャンしてデータにする作業」をなぜか「炊く」と呼ぶそうです。
 
「みんなで2ちゃん用語辞典をつくろう! 」
http://ton.2ch.net/gline/kako/998/998106207.html
より
「 炊く【たく】[動詞](半角板一部)
スキャンしてアナログ媒体からデジタルデータを作ること。
主に同人スレで使われるが、もちろん合法とはいえない。
スキャナの普及率の問題もあり、最初の人間が炊いたものが使い回される傾向にある。
余談だが、紙媒体をスキャンする時は裏に黒紙をあてると裏写りが少なくなり綺麗。 」

「書籍をリッピング」という言い方はスマートで良いですね。
(「炊く」という言葉はどこから来たのだろう......)

もとえ:

いろいろ教えていただいてありがとうございます。
おもしろいですねえ。

「炊く」っていうんですね。知らなかった。
もしかして本だけに「焚く」が2ちゃん的に変換されたんですかね。

自炊技術総合スレッド
http://tmp4.2ch.net/test/read.cgi/download/1111305313/-10
のテンプレート部分に2chのあるいは日本の自炊者が蓄積してきた知恵がまとまっているようですね。

自炊という言葉の成立にも日本の“自炊シーン”にも詳しくないのですが、言葉としては“(職人や他人ではなく)自分でやるから自炊”転じて“炊く”かなと漠然と思ってました。真相は?

とおりすがり:

「炊く」という言葉の成り立ちですが、「平綴じコミックスをスキャンしやすくするためにバラバラに分解する際、本の接着剤を熱して軟らかくするのには炊飯器に入れて熱するのが良い」というノウハウから来たという話を読んだ事があります。
ただ、実際に炊飯器でうまいこと焦げずに接着剤だけ緩められるかどうかはわかりません。

もとえ:

ホントですかあ,それ?
ググってみたけど,それらしいものは発見できず。
続報切望です。

もとえ:

あ,責めてるンじゃないですよ。
すごい説が登場したなあと驚き喜んでいるのです。

妄想含め,他の説もあればぜひ教えて下さい。>all

なぜ我々は本を「炊く」のでしょうか。

gachapin:

参考:美崎薫さんについての記事

▼記憶する住宅
http://210.156.35.135/~motoe/mt/archives/000378.html
 ▽(5)資料のデジタル化問題(1)
  http://pcweb.mycom.co.jp/special/2003/ithouse/004.html

▼『デジタル空間ハウス』
http://210.156.35.135/~motoe/mt/archives/000437.html

gachapin:

●「炊く」という表現の由来を推察

・勝手な憶測ですが以下の漢字誤変換説を思いついたことがあります。(憶測なのでたぶんハズレです)
 
  「リッピング→吸いだし→炊だし→炊き出し→炊く」

リッピングを「吸い出し」と表現するのはネットで散見されました。それが2ちゃんねる的に漢字誤変換で派生していったのかなと。

・新條さんの説の『「自炊」が最初でそこから「炊く」に転じた』というのは気づきませんでした。この説を借用するとこんなでしょうか。
 
  「自分で吸い出す」→「自吸い」→「自炊」

※ちなみに僕が最初に「炊く」という表現に接した機会はスラッシュドットの下記記事でした(正確にはこの記事から2chへのリンクで)。
 
  ▼「本の溜めすぎでアパートの床が抜けた!?」
   http://slashdot.jp/comments.pl?sid=238779&cid=690578
 
…本の重みで床が抜けるほどコレクションしたり、書庫用にアパートの部屋を借りたり、というアレゲな世界が垣間見えます。

●この話題に関心がある理由

・音楽がアルバムという物体の形に執着しなくなってきているのと同様に、書籍も次の段階に姿を変えつつあるのかも、という予感があるからでしょうか。「書籍をデータにしたら」という可能性が、トップダウンな製品の提供ではなく、ボトムアップなユーザからの需要で浸透してるらしい。その浸透の具合が「炊く」という隠語の通用で伺える点が興味深いです。

・書籍という物体のメディアだと、知識のストレージが住居という形をとっている事になります。一冊の本は建築の一部なのかも、とか、住宅とデスクトップは類似点があるのかも、と考えると本江さんのブログの他の記事とリンクしてきそうです

gachapin:

検索語「自吸い」でグーグルしたら答らしきものがいくつかヒットしました。
 
「紙情報のデジタル化◆ドキュメントスキャナ 」
http://pc5.2ch.net/test/read.cgi/hard/1030199319/650-
 
※2005年04月07日 10:24 のコメントで憶測を書きましたが「自分で吸い→自炊」説を僕はどこかで読んで知ってたのかも。

もとえ:

やっぱり「自吸い」なんですね。

「落とすだけの人と区別するために生まれた言葉」ってのが,おもしろいですね。

ありがとうございました。

gachapin:

なぜ書籍をリッピングしたくなるのか、その理由について。
本江さんの下記の記事の一節が解答になっていて、文章としてもコンパクトで素晴らしいと思いました。

http://210.156.35.135/~motoe/mt/archives/001228.html
「文字にできる情報は,形式知としてデジタル・アーカイブに格納されていくであろう。暗黙知はモノにも宿っているから,モノとして投げ出されておくよりほかない情報の在り方がある」

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2005年03月28日 09:20に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「『音楽未来形』」です。

次の投稿は「Googlezon」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。