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卸町のツボを探して

卸町の組合仙台卸商センターが発行している「仙台卸商団地ニュース」の平成17年1月号(№426)に,表題で寄稿いたしました。ご笑覧ください。

卸町のツボを探して
本江正茂

昨秋,学生たちと一緒にオーストラリアのメルボルンを訪れました。メルボルン,フランスのモンペリエ,そして仙台の各都市で建築を学ぶ学生が集まって共同の課題に取り組む国際建築ワークショップのためです。ワークショップそのものもさることながら,現地での建築家や都市デザイナーたちとの意見交換がたいへん貴重な機会になります。堅調な経済に支えられているメルボルンですが,近郊には力を失いつつある町が少なくありません。そうした町へのまちづくりは,メルボルンの人々にとっても,非常に重要な仕事になっています。


日本への留学経験もあるNMBWという若い建築家グループとの対話のなかで,彼らの手がけるまちづくりプロジェクトは,東洋医学でいう「ツボ」を探す仕事だと表現されました。予算も限られ大きな建物を新しく作ったりはできないのだとしても,むしろ,街角にベンチを作ったり,花を植え替えたり,まちのツボを探して適切な刺激を与え続けることこそが大切だというわけです。外から大きな刺激を持ち込むばかりではなく,それぞれの場所が持っている秘められた力を丹念に探し出すことによって,まちづくりは進められていく。これは,卸町にとってもまったく同じことだと思います。

MOXを会場に開催された「卸町まちづくりプロジェクト展」で紹介されていた数々のプロジェクトは,ひとつひとつは小さなプロジェクトに見えるかもしれませんが,いずれも卸町のツボを探し出そうとするものだといえます。たとえば「バーチャル卸町フォトマップ」は,普段は無愛想なフェンスの内側に隠れている様々な魅力の数々を,ケータイやデジカメで撮影してメールで送り,それらを集めてコンピュータグラフィクス状にモザイクのように映し出すことで,新しい卸町のツボの地図をみんなで描き出そうというものです。寄せられた写真に質問したり感想を加えたりして刺激するための「バーチャル卸町ブログ」も作られ,今も稼動しています。定着してきた感のある「おろシネマ」が,毎回少しずつ場所を変え,番組の趣向をこらしながら行われてきているのも,卸町のツボを探そうとする試みにほかなりません。

場所に潜んでいる力を探し出し,目に見える形で表現し,みなで共有するというプロセスを繰り返す。そのことを通じて,町のツボを絶えず刺激し続ければ,きっと卸町を力強く健康なまちへと成長させていくことができるものと期待しています。それは同時に,今日世界中で起きている都市の再生の問題と関わっているのです。

おわり

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2005年01月11日 09:39に投稿されたエントリーのページです。

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