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夢と希望いっぱいの新技術w

毎日新聞のサイトに、お気楽な記事が出ている。

お年寄りや障害のある人にICタグを配り、あらかじめデータベースにしておく。外出時には胸にICタグを付けてもらい、センサー付きの信号機に近づくと、信号機を制御するコンピューターが、お年寄りや障害のある人であることを感知。青信号に切り替え、道路の向こう側の信号機センサーが渡り終わったことを感知するまでは、青のままにしておくことが可能だ。これで、横断の途中で信号が変わってしまい、事故に巻き込まれるような不幸なケースを減らすことができる。 (強調は引用者)

ありえない話だ。渋谷のハチ公前のような、たくさんの人が横断しつづける大きな交差点は、車からみれば「開かずの信号」になる。小さい交差点でしかやらない、というのでは意味がない。ちょっと具体的に想像してみれば、すぐに無理のあることがわかる。

ズッコケていたら、高木浩光氏がさらにいろいろなケースを想定して問題を指摘していた。いちいちもっともな指摘だ。

高木浩光@自宅の日記 - 夢を適当に語るだけで済む商売は楽でいいね:
RFIDタグをなんとかして「善」(っぽい)用途に使って見せようと必死な人が、 こういう浅はかな発想に溺れがちで、怖い。

新しい技術には夢と希望がいっぱいである。でも同じくらいの悪夢と絶望が潜んでもいる。

追記:
なんとなくすっきりしないので、もうすこし考えた。対象者にRFIDタグを持たせる方式でやろうとすると、「なりすまし」があったり、漏れがあったりして、ダメなんだ。信号の制御をやりたいのなら、信号のほうに能力を持たせるべきだ。信号器自体が車の様子や横断している人たちを見て、お年寄りだったら渡り切るまで待ってやるとか、あの婆ちゃんが横断歩道に来るまではクルマを通しておいて、来たら青にしようとか、判断するようにするのがいいんじゃないかな。

ていうと、「だから、信号に婆ちゃんを認識する能力を持たせるためにRFIDタグを持ってもらうんじゃねえか」という話になるだろうが、それは筋が違う。件の記事はRFIDタグを認識してるだけであって、婆ちゃんを認識してるんじゃない。信号機の認識能力の低さという技術的課題を、すべての婆ちゃんが、そして婆ちゃんだけが、RFIDタグを持っているとする、という状況という、よりコストの高い、社会的に無理のある方法によってクリアしたつもりになっているところが馬鹿げているのだ。信号に婆ちゃんを認識させたいのであれば、ありのままの婆ちゃんを認識させられるようにしなきゃダメだ。婆ちゃんを見よ!

ていうか、件の目的を達成するためには、横断歩道でノロノロしてる人を認識できればいいんだから、婆ちゃんかどうかも問題じゃないんだよな。ホンダのインテリジェント・ナイトビジョンシステムみたいので、なんとかならないのか。

コメント (3)

ruto:

開かずの信号問題については、通常の青の時間が終わって高齢者がまだ渡っているときは、歩行者側を赤にして自動車側を青にしなければよいのでは?
追記の部分については同意です。

もとなが:

小さい交差点でのみやるのなら別ですけど、そもそも信号って個別の事情を無視して問答無用で絶対的な「交通整理」することに意味があるシステムのような気がしますが、どうなんでしょう?
インテリジェントな交通整理というのも、全体のためのもので、個別の事情に対応するためのものじゃないですよね。

それはそれとして歩行者最優先という大前提を忘れてる社会の問題をなんとかして欲しいです。なんで信号のない横断歩道で車を抑えて渡ろうとすると睨まれるんだろう。天の声の信号の指示には従うくせに目の前の歩行者の意志は無視する。変なの。

もとえ:

開かずの信号。信号全部赤。なるほど,そうすればいいですね。

でもさ,考えてみりゃ,そもそもが「婆ちゃんがまだ渡ってんだから,青になってもちょっと待ってなよ」ってだけの話なんで,了見の狭い運転手を叱らずに,信号なら守るはずだってんで,その制御で事故を減らしましょうという大本の発想に問題があるわな。

技術のシーズから話を持ち上げてくときに陥りがちな罠。自戒せねば。

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2005年01月08日 11:58に投稿されたエントリーのページです。

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