浅草の老舗ラブホテル「サンフラワー」と,ギャラリーでのインスタレーションと,Webとの三者で編み上げられる空想のラブホテル。ドイツのアーティスト,シュテフィ・ユングリングの作品。性行為に用途を特化しながら売春宿ではない「ラブホテル」というビルディングタイプは日本特有のものであるらしい。
ギャラリーでの展示は終わったが,オンラインでroom4love projectはまだ見られる。もちろん,浅草ホテルサンフラワーは今もある。
それぞれの部屋のパノラマ映像が圧巻。また,各部屋には,
ロラン・バルトの『恋愛のディスクール』からの引用を冠したテキストが添えられている。
バルトを引いていることからもわかるように,これは記号論的なプロジェクトであるだろう。ラブホテル,それもサンフラワーのような演出たっぷりのそれは,野卑であったり洗練されていたりの差はあるが,恋愛の記号過程の展開を環境のデザインを通じて推進しようとするものである。ユングリングの仕事は,まずはその記号過程の愛おしい部分をおもしろい形ですくいとって提示している。
サンフラワーのホームページに記された秘密の入り口の紹介や盗撮カメラは絶対ありませんという話に見られる「身も蓋もなさ」もまた,ラブホテル的な恋愛の記号過程の様式にかなうものであるなあと思う。