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『質的研究入門』

を読む。

ウヴェ・フリック『質的研究入門—「人間の科学」のための方法論 』小田博志,山本則子,春日常,宮地尚子訳,春秋社,2002

質的研究とは次のような傾向の学問的立場だといえる——質的研究とは具体的な事例を重視して,それを時間的,地域的な特殊性の中で捉えようとし,また人々自身の表現や行為を立脚点として,それを人々が生きている地域的な文脈と結びつけて理解しようとする分野である。(p.19)

都市だとかデザインの研究ってのはまさにそういうものじゃん,と読み進むのだが,これはちっとも「入門書」じゃないのであった。Qualitative Research についての網羅的なガイドブックという趣向で,理路が整然としていることはわかるのだが,ちっともすんなり呑み込めず,しかもその責任が著者でも訳者でもなく自分にあることを感じながら紙面に視線を滑らせつづけるってのはなかなかにしんどい。きっと自分で痛い経験を積んでから,この本に帰ってくると,その価値がよくわかるのであろう。ま,教科書というのはそういうものだ。

そして,教科書をいくら読んでも,それで論文が書けるというものではないのだった(涙)

訳者による巻末の用語集はコンパクトで役に立つ。学生に説明するのによさそうだ。「厚い記述 thick discription」の項に,「いくらページ数が多くて量的に「分厚い」エスノグラフィーであっても,ギアーツ的な意味では「薄い記述」でしかない場合もあり得る」とあって笑った。あるある。

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2004年09月07日 23:30に投稿されたエントリーのページです。

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