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反社会学講座

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パオロ・マッツァリーノ『反社会学講座 』イーストプレス,2004

少年の凶悪犯罪が増えている。昔の日本人は勤勉だった。少子化のせいで年金制度が崩壊しそうだ。イギリス人は立派で日本人はふにゃふにゃだ。欧米の若者は自立していて,日本の若者はパラサイトしている。等々。

社会学が指摘し,いまや常識だと思われている話が,いかに飛躍した論理と根拠のない思い込みによってできあがっているかを笑いのめす。ゲラゲラ笑いながら読める。もちろん「社会学」は間違っていて「反社会学」が正しいのだ,という盲目的態度に陥ると同じ穴に落ちる。メディア・リテラシー論というわけだ。

筆者は「悲観主義者というのは,ひきょうなんです」という。悪いことが起きるぞーと騒ぎたて,それが本当になればそれ見たことかといい,実現しなくても備えあれば憂い無しだったなどという。どっちに転んでも傷つかない。「悲観主義者は常に逃げ道を確保しているズルい人たちなのです」。対して楽観論者は悪い結果の場合には指弾されることをまぬかれない。「楽観論者こそ自説に責任を持たざるをえない。(p.272)」

悲観主義はデザインを実践することができない。デザインの実践は楽観主義的に行われる。こうやるときっとイイはずさってふうに。その責任はことのほか重いので,筆者の提唱する「人間いいかげん史観(p95)」はとても魅力的に映る。

本書は,書き下ろしを含むものの,大半は「スタンダード 反社会学講座」ですでにオンライン公開されている。こちらには新作や「アフターサービス」もある。

新作の中でも,「反社会学講座 第24回 こどもが嫌いなオトナのための鎮魂曲」が面白かった。

「よいこのみんな、チンパンジーは、なにを食べるかわかるかなー?」 「バナナー!」 「ちがいまーす。チンパンジーは、サルを食べるのでーす」 「ちょっと。やめてくださいよ。こどもたち、ひいてるでしょ」

 本当です。五百部裕さんの「アカコロブス対チンパンジー」によると、アフリカの野生のチンパンジーは、1年に平均10kgの肉を食べていますが、その5〜8割はアカコロブスという中型のサルなのです。以前NHKで放送されたイギリスBBCテレビの『ほ乳類大自然の物語』でも、チンパンジーがサルを狩って肉を食らう、ちょっとショッキングな光景が映し出されていました。(前掲webページ)

考えてみれば雑食のチンパンジーが肉を食べるのは当然だし,ジャングルで捉えやすい小型のほ乳類はサルなんだろうけど,その光景を想像するとちょっとぞっとしてしまうな。

上記引用部に紹介されているのは五百部裕さんの「チンパンジーのホーム」。

コメント (2)

もとなが:

確かに雑食の一部の肉食なんでしょうが、なんかそれ以上のことを考えてしまう光景なんですよね。テレビで見ただけですが。
ものすごく盛り上がるんです。もうチンパンジーたち大興奮。これから狩って食うぞとなるとどんどん興奮が高まって、いよいよ食うとなるともう絶叫して暴れながら、食う。

カーニバル、ってまさにこういうことだよな。と思ってしまいます。

一日あたりにすると27gしかないから、貴重なんでしょうけどね。ただ、なかなか食えないというより、時々しか食わない、という感じもありました。

サル学方面は、面白いですよ。

もとえ:

そうか,日常的にたんたんと食べるって感じじゃないんですね。
カーニバルだもんな,たしかに。

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2004年06月30日 20:16に投稿されたエントリーのページです。

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