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『ギブソン心理学の核心』

を読む。

境敦史,曾我重司,小松英海『ギブソン心理学の核心 』勁草書房,2002

吉橋昭夫さんに教えていただいた本。ギブソンの個人史と知覚心理学の学説史を重ねながら,ギブソンが提示した「アフォーダンス」という概念を厳密に理解しようとする。なかほどの学説史の部分は正直いって私には読みにくかったが,序のアフォーダンスに関する○×クイズや第5章「『アフォーダンス』とはどういうことか」などは,非常に端的に書かれており,なかなか呑み込めずモヤモヤしていた部分はかなりくっきりする。

ギブソンがわざわざ造語をしなければならなかった理由にこそ,アフォーダンスを理解する鍵がある。それは,

「生活体と環境との相互依存関係」を的確に言い表す言葉が存在しなかったからである。従って,「生活体と環境との相互依存関係」を問題にしない文脈で「アフォーダンス」の語を用いることは,不必要であるだけでなく誤りでもある。(p.165)

p.161からのドナルド・ノーマンによる「アフォーダンス」私説への批判は明快。

最も根本的な問題は,ノーマンが次のことを理解していない点である。即ち,アフォーダンスとは,"どのような可能性があるかということを教えてくれ"る「物」ではなく,「生活体との相互依存関係において事物(環境)が持つ可能性そのもの」だということである。(p.161)

アフォーダンスという概念が,あちこちでグジャグジャに使われているのはノーマンにかなりの非があるといえるだろう。

とはいえ,ノーマンが『誰のためのデザイン?』で指摘したことの有用性が失われてしまうというものではない。吉橋さんのブログの「‘作る’前に大切な...」のコメントにも書いたのだが,学問的にそれは「アフォーダンス」ではない,と断ずるのはそれはそれで正しいけれど,一方で,こういう時に「アフォーダンス」という言葉を借りて言いたかったこと,アフォーダンスって概念を知って「それだ!」と思った何か,があるわけで,それに何か適当な名前を与えられないものだろうか,という新しい課題は残るのである。

コメント (2)

あねは:

ノーマンの本で読んだ先入観があったから、
他の本でアフォーダンスのことを読んでも
ピンとこなかったんですね。
もっとちんと読んでれば気づけたんだとは思いますけれど。。
もう一度アフォーダンスについて調べてみたいと思います。

「デザインの生態学」の中で、深沢氏が、「相即」=近似=「はまる」という概念を使っています。これが‘アフォーダンス’にかなり近いのですね。
「要は自分から生み出すという思考をもとにしてデザインをしているならば、そうはならない。だから探す。」(同書・P85)とも。
「自分から生み出」さずに、「探す」デザイン。−デザインの方法論や考え方そのものの問い直しを含んでいる気がします。

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2004年06月24日 02:22に投稿されたエントリーのページです。

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