を読む。
後藤武,佐々木正人,深澤直人『デザインの生態学』東京書籍,2004
豊富な話題,親切な用語集,過不足ないブックガイド。よくできた「教科書」だ。
アフォーダンスとはわかったりわからなかったりすることである。(佐々木,p247)とあり,おお佐々木先生もそうなんですかぁと嬉しく共感する。
p92に,「西山浩平さん」のエントリで触れた「オブザヴェーション」についての解説もある。
ギブソンは,「ものや空間という「切れ目」のあるユニットによって環境を捉えるのではなく,「サーフェス」のレイアウトであると捉えることにより,環境には区切れがなくなる(p41)」と考えたというのだが,人間が環境のレイアウトの何に関心を持っているかは,たったの5つのパターンに整理できるという。それは,平坦性,閉じ具合,引き延ばされ具合,サーフェスの結合の仕方,囲い方,である(p42)。
一方,人の周囲にあるものは14種類で,それは新石器時代からずっと変わっていないというエドワード・リードの説が紹介されている(p43)。その14種類ってのは,容器,棒,スポンジ,くし,叩き切るもの,楽器,ひも,衣服,装飾品,尖ったもの,縁のあるもの(ナイフや刀),顔料,寝床,火。
14種類のもののサーフェスの5種類のレイアウトを延々とデザインし続けているのが人間である,というわけである。たった,それだけです。
アフォーダンスの理論がおもしろいのは,「環境」を,物理学的世界とは違った,動物や人間の知覚する世界として定義しなおしているところだ。この時「観察者と彼の環境は相互依存的なもの(ギブソン『生態学的視覚論』p16)」であるから,デザインもまた当事者的な行為として,再定義されることになるってわけなのだ。