を読む。
西垣通『こころの情報学 』ちくま新書,1999
西垣の,『基礎情報学:生命から社会へ』に先立つ本。新書の簡便な体裁だが『基礎情報学』に通ずる道は示されている。
『基礎情報学』で,アフォーダンス=実体概念としての情報とオートポイエーシス=関係概念としての情報の矛盾について,
「しかし,実はこれは表面的・用語的な相違にすぎない。より深い次元では,アフォーダンス理論と基礎情報学とはむしろ共通点も大きく,相補うのである。詳しくは西垣通『こころの情報学』(ちくま新書,1999,pp150-164)を参照。(『基礎情報学』p61注12)
とあったので,これを読んでみた。(ていうかとりあえずフォトリーディングしてみた。こういう読書の場合は,目的がクリアなのでフォトリーディングむきなんだろう。)
アフォーダンス理論では,情報は外部環境世界に実在している,と考える。「我々ののどが乾いていようといまいと,水は「飲むこと」というアフォーダンスを知覚されうるのであって,そえrは水という物質の性質からキチンと定まる。」(『こころ…』p154)
アフォーダンス理論が「生態学的実在論(エコロジカル・リアリズム)」と呼ばれる所以である。
これに対し,オートポイエーシス理論では,「動物は客観的実在としての対象を「発見(知覚)する」のではなく,みずからの神経系の内部構造にもとづいて,対象の〈意味〉をいわば「発明(構成)する」と考える」(『こころ…』p155)
両者は情報の在り方に対する考え方が正反対である,とまずはいえそうである。
が,そうではなく,両者は裏表であって相補的なのだ,というのが西垣の主張である。図式的には,「オートポイエーシス理論とアフォーダンス理論は,それぞれ動物の認知行動の時間的側面,空間的側面に着目したと整理できる」としている。
実はギブソンもマトゥラーナも,古い知覚モデルへの批判という同じ地点からスタートしている。外部からの光刺激が網膜像をつくり,それを神経系が情報処理することが認知活動である,というのが従来の知覚モデルである。
以下,未整理のまま。
ギブソン | マトゥラーナ |
アフォーダンス理論 | オートポイエーシス理論 |
光刺激の変化から不変項を取り出す | 遺伝や学習など過去の歴史から適切な行動を導く |
直接知覚(発見) | 歴史的認知(発明) |
情報は身体の外部(環境)にある | 情報は身体の内部(神経系)にある |
認知行動の空間的側面 | 同 時間的側面 |