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これがあれを滅ぼすだろう

ヴィクトル・ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』 の一節:

司教補佐はしばらく黙ってその巨大な建物をながめていたが、やがて溜息をひとつつくと、右手を、テーブルにひろげてあった書物のほうへ伸ばし、左手を、ノートル=ダム大聖堂のほうへ差し出して、悲しげな目を書物から建物へ移しながら言った。
「ああ! これがあれを滅ぼすだろう」

(漢字文献情報処理研究会メールマガジン, 2002.3.15, 第5号)

「これ」が書物、「あれ」が大聖堂である。


8月28日の蒲江町でのシンポジウムでの基調講演で、鈴木博之さんがこのユーゴーの言葉を引いて、情報が場所を滅ぼす、と読み替えていた。情報化とはすなわち場所からの自由である、場所の不利・場所の拘束からの自由である。だが、それで場所が滅びるのかといえば、そうではない。WWW上のひとまとまりの情報のセットを"SITE"と呼ばずにはいられないように、「場所」としての身体を離れることのできない人間にとって、「情報」はよるべなく不安なものである。さらに、壁画からタブローへの変化の後に登場したサイト・スペシフィックなアートを例に、場所の復権を論じたのだった。
つまり、

 これにあれは滅ぼされたりはしない。

私としては、さらにこう言いたい。

 これがあれに力を与える。

適切に情報をセットすることによって、その場所の価値を高めるような、情報の技術とデザインを考えたい。場所の価値を高めるための行為の総体を「建築」と呼ぶのであれば、このような情報の技術とデザインもまた、「建築」にほかならない。

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2003年09月04日 10:03に投稿されたエントリーのページです。

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