喜多千草『インターネットの思想史』青土社、2003を読む。
リックライダーを中心にすえた、黎明期からインターネットへのコンピュータ開発思想史。一次資料も多く利用しており、類書によって作られた神話を突き崩す試み。迫力がある。アルトの開発思想史を次著としたいとあり、楽しみだ。
内容もさることながら、テクノロジー黎明期の熱い感じが伝わってくる。今、我々が使っている「現実の」コンピュータシステムは、他にもたくさんありえた「可能な」システムをめぐる様々な思惑の錯綜した中で出現した偶然のひとつにすぎない。わかりやすい神話を鵜呑みにしないこと。可能世界を見渡して、現実を評価しよう。現実に立脚しているだけでは、開発はできない。
後期の講義「空間と情報」でも、SAGEからアルト、VRへの展開を扱う。本書は重要な参考文献になる。でも、いきなりこれを読んでも何の話をしているかわからないかも。神話をわきまえてから読むべし。